時事的だけど、古くならない。
時事的な問題をテーマにする経済や金融に関する書物は、しばらくしてから読み返したりするとあまりに的外れになり、「これは痛い...」となるケースが多いものです。
「2012年には日経平均2万円!」
「1ドル200円の時代が来る!」
「もうすぐ日本経済が世界を支配!」
(ノ∀`)ノ∀`)ノ∀`)ジェットストリームアチャー
さて、今日のレビューはこちらになります。
- 作者: 竹森俊平
- 出版社/メーカー: 日本経済新聞出版社
- 発売日: 2008/09
- メディア: 単行本
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本書が出版されたのは、2008年9月ですので、あのリーマンショックの前であります。
サブプライムローンに端を発する金融危機について解説しておりますが、証券化やCDS(クレジット・デフォルト・スワップ)などの金融技術の功罪、(預金取扱金融機関では無い)欧米の投資銀行の流動性危機についてなどなど。
今日読んでもまったく古くなっておらず、いろいろ示唆に富んでおります。
ただ、時価会計こそが金融危機を深刻化させてしまったという論法は、「常識的」ではありますが、財務報告担当としてはちと。
時価会計(公正価値会計)がバーゼルⅡの規制を通じてプロシクリカリティ(景気増幅効果)をもたらしてしまった、というのは一面の真実ではあります。
しかし、サブプライム危機〜リーマンショックのような事態での投げ売りは「公正価値」ではない、と会計基準にも明記されておりますし、公正価値会計の停止は、金融機関が保有する金融商品の実態を隠すことによって市場に疑心暗鬼をもたらすに過ぎないので、この点は賛同できなかったです。
3年前の本ですが、このように「考えさせてくれる」ポイントがいろいろありますので、金融に関心のある方はぜひご一読をお勧めします。