すらすら日記。

すらすら☆

しらさぎ会(12月15日@東京)記録。その6

税務(税金計算の技術)は納税者が実際に実行可能なものでなければならないため、必ずしも理論との整合性が図られているものではありません。

欧州付加価値税・日本消費税の特質である「前段階税額控除」を完全に行うためには、理論的にはすべての費用(課税仕入れ)に対して収益(課税売上・非課税売上・対象外取引)をひもづけしなければなりません。

しかし、現実の企業活動における費用は、収益に個々に紐付けることができるはずもありません。


消費税法第30条第2項の課税・非課税・共通売上に「その区分が明らかにされている場合」は、多分に実務の実行可能性を考えた簡便法であり、さらに、共通区分の前段階税額控除に用いる「課税売上割合」はもう一段の簡便法であると考えられます。
(中小事業者向けの「簡易課税制度」はもはや簡便法を通り越した極めて割り切った制度であるか。)

現状の法令による控除は、以下の点で理論的に不整合であると考えらます。

①そもそも、対象外売上に紐づく費用は理論的には税額控除ができないと考えられます。なぜなら、対象外取引は課税資産の譲渡ではなく、課税物件・課税標準を構成しません。それに対し税額控除を行うのは論理矛盾です。

②課税売上割合は、事業者単位(法人単位)で一つだけ算出され、それで全社の共通対応の控除を行うというものすごい単純化した計算方法ですが、事業を支店・事業部形式で行うのか・子会社方式で行うのかで全く結果が変わってきてしまうという乱暴なものです。

・・こちらは講義では触れませんでしたが、

③前段階税額控除は生産の中間投入だけで行われるべきものであり、事業者が最終消費者になる場合は控除を認めるのは付加価値税の論理構成からして有り得ません。フランスなどでは企業でも交際費や最終消費財購入の場合、税額控除ができません。


もちろん、日本の消費税の最大の欠陥は、インボイスもなく、登録事業者制度もないため、免税事業者や消費者からの仕入れでも前段階税額控除ができてしまうことにあることは言うまでもありません。
(ただし、インボイスは魔法の杖ではないので、転嫁を確実に保証するという効果はないと考えております。あくまで価格は市場が決めるので、インボイスはその道具に過ぎないかと)

次項では課税売上割合の不整合さを指摘したいと思います。

続くw

すらすら日記。は、Amazon.co.jpを宣伝しリンクすることによってサイトが紹介料を獲得できる手段を提供することを目的に設定されたアフィリエイト宣伝プログラムである、Amazonアソシエイト・プログラムの参加者です。