しらさぎ会(12月15日@東京)記録。その8(最終)
ようやく最終回です。
金融取引に対して消費税が「非課税」であることにより、様々な経済的選択が歪められ、税収が減るとともに社会的厚生が低下しているのではないか・・というのが本論の建前であります。
いえ、本音は、控除対象外消費税額で利益減少!これで労働者(私も含みます)へ租税負担を転嫁されちゃたまらん!なんとかしろ!というものであります。
今般の社会保障と税の一体改革法では、金融取引と同じく「非課税」である医療機関の設備投資にかかる控除対象外消費税額の問題について、何らかの(立法措置を含む)手立てを検討する、との一文が入りました。
金融業界は医療業界と異なり、このような「政治力」がありませんので、何ら政治的検討は今のところありません。
私が考えるに・・
日本の消費税法は欧州付加価値税に比べますと、単一税率で非課税も限定的であり、業種ごとの例外措置も国・地方公共団体・NPO法人関係などごく限られており、比較的、効率が高い税制であると考えられます。
確かに非課税による「歪み」は除去されるべきかと考えられますが、今般の医療機関のような例外をつくると、では我が業界も・・という各業界団体によるレントシーキング的な例外措置要求が続出して欧州のような複雑怪奇な税制になりかねません。
その複雑怪奇な税制によるレントを享受するのは一部業界で、歪みを押し付けられるのはそれ以外の大多数の一般国民であります。
現実的な解決策としては、消費税法施行令48条の課税売上割合の計算方法を少しだけ見直すことで、金融取引の非課税による「歪み」のかなりの部分は除去できる、と考えられます。
選挙前には新聞業界が率先して軽減税率を要求したり、「食料品軽減税率!」などのポピュリズム的主張をする党が与党に入りました。
彼らが獲得しようとしているものは「公平な税制」ではなく、業界の権益や得票です。
一有権者として、近視眼的な例外措置を消費税法に持ち込まないことを希望し、この講義を終えたいと思います。
まだまだ論考不足ですが、お読みいただき、ありがとうございました。
なお、この講義のテーマに関しましては数値による「非課税による歪み」の実証分析なども加え、脚注も付した上で電子書籍で出版できたらいいなあ、と考えております。
その節はぜひ、お読みいただきますよう。