すらすら日記。

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直感に反する?

金融危機に際しまして、信用状態が悪化した投資銀行
自らを対象とするクレジット・デリバティブの評価益で
多額の「利益」を計上し、それに基づいて
経営陣にボーナスを支給する、などということがありました。

これに関しましては「直感に反する」という違和感を表明する方が多数おりまして、
私自身も、会計・金融の専門家の端っこにおりながら
うまく説明できず苦慮しておりました。

しかし、先日これについて会計的に納得性のある説明を
してくれた記事を見つけましたのでご紹介いたします。

あずにゃんこと、あずさ監査法人の隔月の情報誌AzInsightです。
Az Insight1月号

前IASBの理事も務めた山田辰己氏による解説です。

以下要約です。

信用格付の低下した金融機関は通常、資産サイドも悪化して損失を計上する。
これに対して、負債サイドのCDS等の評価益が計上されると
損失と評価益で打ち消し合うので、損益計算書(包括利益計算書)上では
ネットしあう結果となり、あまり違和感のある結果とはならない。

これは自社のクレジット商品を購入するそもそもの狙い
=ヘッジ効果が表わされているとも言えます。

しかし、資産サイドがオフバランス処理されている場合は
負債サイドのみが公正価値評価されて評価益のみが認識されてしまう結果となります。
これは現行の会計制度上、BS計上できない「自己創設のれん」が
毀損したということでもあり、
現在の会計制度の欠陥であるとも言える、と。

会計制度の欠陥、という説明は、会計の世界に身を置くものとしては
ある程度、納得性のある説明でした。

しかし、この利益に基づいて賞与が支払われるとしたら
他の利害関係者の納得は得られるでしょうか?

今日の財務諸表は一部の誤解が見られますが、
「全面的な時価主義」ではなく、
取得原価主義と公正価値評価の混合モデルであり、
資産・負債の要件を満たさないものは計上されないなど
いろいろな難点もあります。

学問的でもあり、実務的でもある問題なので、
引き続き考えていこうと思います。

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