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金融緩和を複式簿記で表してみる。

先月2月14日、日銀は一段の金融緩和を発表いたしました。
その中で、資産買入の規模を55兆円から65兆円へ増額する、とされています。

初歩的な疑問ですが、
なぜ民間から日本銀行が資産を買入すると
金融緩和になるのでしょうか?

これを万国共通の複式簿記を用いて解説します。

日本銀行は民間(市中銀行、仮にみずほ銀行とします)から資産(長期国債)を買入します。

1,000億円としましょう。
日本銀行の帳簿には下記の仕訳が記帳されます。

(借方)長期国債 1,000 (貸方)日銀準備預金 1,000

日本銀行の帳簿に長期国債(=資産)が1,000億円増加するともに
日銀準備預金(=負債)が1,000億円増加しました。
ここで注意していただきたいのは、
長期国債を購入した代金として
輪転機を回して紙幣(日本銀行券)を印刷し、
それをトラックに積み込んで市中銀行へ届けるわけではありません。
銀行間の決済は日銀当座で行われるのであります。

実務的にはデータが入力されるだけですね。


②次に、長期国債を売却したみずほ銀行の仕訳です。

(借方)日銀預け金 1,000 (貸方)長期国債 1,000

①の日銀準備預金と、②みずほ銀行が保有している日銀預け金は
同じものであり、ただ勘定科目の表示が違うだけですね。

みずほ銀行の日銀預け金が1,000億円増加し、
長期国債が1,000億円減少しました。
この日銀預け金は当座預金ですので、本来は無利息だったのですが、
最近は「補完当座預金制度」ということで0.1%の利息が付きます。
しかし0.1%の金利では、みずほ銀行は預金者への利息の支払いや
人件費・物件費などの経費を賄うことすらできません。

そこで有望な貸出先を探しだして、
日銀預け金を上回る利率での貸付を行う、
あるいは有価証券投資を行うことを考えるわけです。

③貸出または有価証券投資の仕訳です。

(借方)貸出金 1,000 (貸方)預金 1,000 又は
(借方)社債  1,000 (貸方)預金 1,000

民間銀行と民間企業の間での決済は、
預金口座へ振り込むことで行われます。
もちろん、みずほ銀行は輪転機を回して
紙幣(みずほ銀行券?)を印刷することはできませんw

ここで「預金」が創設されました。
金融の教科書では、貸出を受けた企業がまた別の銀行へ預金し、
預金を預かった銀行はまた貸出を行い・・という*1
「銀行による信用創造」が行われ、これが循環して
景気が大いに盛り上がる・・はずなのですが。
これが金融緩和の教科書的な波及です。

この説明の大きな落とし穴は、
みずほ銀行があっさりと貸出先、
あるいは社債を発行したい先を見つけ、引受できるとの
仮定を置いていることです。

実は貸出を受けたり、社債を発行してまで
事業を拡大しようという企業がなかなか無いが実情です。

貸出先を見つけられないみずほ銀行は、
仕方がないのでまた新規に発行された長期国債を引き受けることにしました。
国債の代金の受け渡しは日銀預け金を使います。

(借方)長期国債 1,000 (貸方)日銀預け金 1,000

あれ?この仕訳は②の反対仕訳です。
ただし、長期国債の銘柄は異なりますが、何も変わっていません。*2

あるいは、これ以上金利リスクは取れない!ということで
日銀預け金に置いたままにしておくかもしれません。
この場合は、仕訳なし、です。
これを「ブタ積み」と称します・・w

さて、この度の金融緩和はどう波及していくでしょうか。
注視したいと思います。。

参考文献・参考リンク
日本銀行の機能と業務
金融システム 第4版 (有斐閣アルマ)
日本銀行 金融市場調節方針に関する公表文 2012年
日本銀行 補完当座預金制度

*1:預金の一定割合を準備預金に積むことが義務付けられていますが、大部分は貸出へ回せるわけです。

*2:政府は国債発行により1,000億円を手に入れます。これで社会保障やら何やら歳出をまかなうわけです。

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