貧困と金融について。
貧困撲滅に金融が果たせる役割というのは、
こちらセイヴィング キャピタリズムにも登場しますが、
今回はこちらを読んであまりに面白かったので、
いつものブクログではなく、久しぶりにこちらに投稿いたします。
- 作者: ジョナサン・モーダック,スチュアート・ラザフォード,ダリル・コリンズ,オーランダ・ラトフェン,野上裕生,大川修二
- 出版社/メーカー: みすず書房
- 発売日: 2011/12/23
- メディア: 単行本
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一般に想像されているのとは異なり、
一日2ドル以下で暮らすような貧困層でも
入ってきたお金をその日のうちに使ってしまうような
「その日暮らし」をしているわけではありません。
貧困層も結婚式や葬儀、宗教的行事などまとまった出費のために
日々やりくりし、貯蓄をし、借入をして返済をし・・という
金融を利用する生活をしているという当たり前の事実を
バングラデッシュ・インド・南アフリカでの
長期にわたるインタビューをもとに、彼らがどのように
ポートフォリオを組んでいるか、を丁寧に解説しております。
この本には、グローバル資本主義への糾弾も無ければ、
貧困層の悲惨への同情や憐れみもありません。
日本でも「格差」や「貧困」の問題が取り上げられてきておりますが、
あまり「金融」の問題と絡めて論じられることは無いのかな、と感じております。
日本における貧困層は、本書で挙げられた南アジア諸国や南アフリカで
普通に見られる血縁関係による支援も希薄になっているし、
むしろ略奪的高金利の犠牲になっていて、
金融を利用することにより貧困から離陸する、という事態は
あまり無いのかも、と感じました。
むしろ、学生さん・生徒・児童へ
学費を支援しているNPOなどは慢性的に資金不足で
苦しんでいるとも聞きますので、
寄附だけに依らず、「金融」の仕組みを作って
支援できることが無いのかな、とも考えはじめました。
リテール金融界にいる一員として、貧困と金融問題を考えるために
お勧めしたい一冊です。