すらすら日記。

すらすら☆

足りないのは現金?

ちょっと前の金融の教科書では、
現金及び中央銀行預け金(日銀当座)は利息を生まないので、
金融緩和によりキャッシュを手にした銀行は
利息収入を求めて貸出金や有価証券投資へ振り向け、
それが再び銀行に預けられて、さらに貸出金+有価証券投資へ・・
という信用創造の過程が進んでいく、と教えられておりました。

しかし、これだけ金融緩和を行っているのに、
さっぱり民間銀行の貸出金は増加しておりません。
いえ、日銀の金融緩和が不十分だとか、
銀行員がさぼっているだとかというのは置いておくとして・・

金融の教科書のモデルでは、
銀行は豊富な借入需要に直面しており、
常に積極的な与信を行おうとしていて、
銀行の貸出行動を制約しているのは
流動性の不足(現金の不足)だけである、という
仮定に基づいております。

しかし、現実には銀行は自らの自己資本の大きさから来る
リスクテイクできる大きさに限界があります。
貸出金や有価証券投資を行えば、信用リスク・金利リスクなどを
新たにとることになるのは言うまでもありません。
貸出金は毎月の約定償還で少しづつ減少するので、
それをリカバーするだけでもたいへんな営業努力が必要ですし
有価証券投資も無制限にリスクテイクできるわけではありません。
また、不良債権処理や株式の減損処理などが見込まれる場合は
さらに個別行のリスクテイク幅が少なくなるかと。

金融緩和を行うと、資産価格は上昇しますが、
民間銀行のポートフォリオ・リバランス効果は薄いのではないか。
モデル化された信用創造モデルではこの辺の議論が
欠落しているのではないかな、といつも感じています。

参考文献
現代の金融政策―理論と実際
現代の金融入門 [新版] (ちくま新書)

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