座して死を待つより。
商業銀行のビジネスモデルは地味なものです。
貸出を行う先に何度も足を運んで債務者と面談し、担保を評価し、貸出金の回収が安全にできるか慎重に審査してようやく資金を融資します。
そして後は毎月毎月わずかな利息を上乗せして資金を回収して行きます。
超低金利が当たり前になり、利息収入は1億円融資しても年間100万円〜200万円とかのレベルです。
1件1件は小さい利息ですが、貸出金の量が数百億円〜数千億円もの巨額になってようやくまとまった金額の利息収入になります。
この利息収入で、預金者へ利息を払い、人件費・物件費・租税公課を賄い、そして慎重に審査しても一定確率で起きてしまう貸倒損失を処理して、国・地方公共団体の取分である税金を納め、最後にようやく株主への配当です。
長いですね。
慢性的な資金不足が続いていた高度経済成長期はともかく、今や民間部門は資金がダブついてしまっており、貸出先を探すのは容易なことではありません。
そこで、環境ビジネス・アジア進出ビジネス・アグリ(農業)ビジネスなどの新しい融資先を模索していっております。
- 作者: 高橋克英
- 出版社/メーカー: 中央経済社
- 発売日: 2012/03/14
- メディア: 単行本
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この本では、地域金融機関のそのような新しいビジネスモデルを紹介しております。*1
新聞の金融面などに「再生可能エネルギーへ10億円融資」や「牛を担保にした新しいABL(動産担保融資)に5億円」とかの紹介が載ることもあります。
しかし、上述のとおり貸出金業務は数百億円〜数千億円の規模になって初めてビジネスとしての採算がとれるか、というものであり、見た目の新しさと派手さでばかり取り上げられている「新しいビジネスモデル」はまだまだ宣伝以上の効果をもっているものではありません。
著者も、何回か本文中で触れております。
それでも、地域経済の低迷で従来型の貸出業務は量・利回りとも細る一方であります。
座して死を待つよりも。
企業も個人もいろいろ模索していくのでしょう。
*1:弊社も何度か登場しております。