すらすらわかるゼロ金利政策と量的緩和政策(完全版)
肝心なところが2つほど漏れていましたので、補完しました。
なお、他の方の@は載せておりません。
以下、完全版ですw
銀行はお客さんから預金を集め、それを貸出金・有価証券投資(以下、「投融資」とします)へ回して利鞘を稼ぎます。しかし、預金を全額投融資へ回す訳ではなく、預金の払戻に備え一定の現金を用意している
また、顧客が銀行間で、商取引や買い物などをすると、振込や口座振替などで資金決済を行いますが、これは現金を運んで行くわけではなく、各銀行が日本銀行に開設している当座預金で差額でやりとり(決済)される
各銀行は資金決済や預金払戻に備え、一定の残高を日銀当座預金に置いております。常に預金の一定率の法定準備預金も義務付けられている。これをぎょーかいでは「積み」などとも申します
以前は、日本銀行当座預金は金利が付されませんでしたので、法定準備以上の余剰資金は、銀行などだけが参加できる短期金融市場で運用しておりました。これを呼べばすぐ戻る資金ということで「コール市場」と称した
コール市場での金利も、借りたい人と貸したい人の相対で決まります。市場に資金が逼迫していれば上昇し、ダブつけば下がる
日本銀行では、金融政策として市場金利を上げ下げするために、このコール市場、特にオーバーナイト(翌日返済)ものの金利を誘導することにより政策を達成しようとします
毎月の金融政策決定会合は、このコール市場の金利の誘導目標を決めます。これをゼロ金利へ誘導しようとしたのが「ゼロ金利政策」
銀行は、コール市場の金利がゼロになれば、収益機会を求めて貸出金実行、有価証券投資を行い、それが実体経済へ波及してく、というのが伝統的な金融の教科書の記述でした
しかし、実際はコール市場の金利がゼロになっても、銀行の投融資は増加しませんでした。これについては様々な論考がなされています。この時期、銀行は巨額の不良債権を抱えその処理に悪戦苦闘しており、とても新たにリスクをとって新規融資には踏み込めなかった、という話と産業界の方に実需(資金需要)が無かったという話も。ニワトリと卵ですね
ゼロ金利政策が効果が無かったのを見て、次には「量的緩和政策」に踏み込みます。これは日本銀行が市中銀行から国債等を買入して大量の資金を供給=日銀当座預金の残高がどんどん膨らんでいく
これにより「ダム」が溢れていつかは市中に資金が流れるのではないか・・などとも言われました
しかし、これほどの金融緩和を行っても、教科書のように銀行が新たな投融資を行うことはありませんでした
ゼロ金利政策や量的緩和政策がなぜ、銀行のポートフォリオ・リバランス(貸出・有価証券投資の組替)を引き起こさなかったについては、実証的な論考もなされていますが
量的緩和については、日銀当座の残高が30兆円になっても50兆円になっても効果が無いので、では買い入れる資産の種類を変えようということで国債だけではなく社債、REIT、銀行保有株式まで買入し始めた
非伝統的金融政策、というものです。いわば何でもアリ状態。これはデフレ脱却という目標の他、銀行の持合株式買入による金融システムのリスク軽減〜マクロプルーデンス的なことも意図されていた
私もいろいろな論考を読みましたが、1997年〜98年の拓銀山一破綻から、08年のリーマンショックまで、一時の中断をはさんで続けられたゼロ金利政策・量的緩和には、デフレ脱却効果は認められず、金融システムの安定化維持に役立ったのみではなかという
なお、ゼロ金利政策が続くと、金利ゼロが将来も続くという市場の期待を形成し、長期金利も釣られて低下して行きます。今や2〜5年物の金利はほぼ「寝て」しまっている
以下、いくつか参考図書を挙げます
これは必読。元日銀金融研究所所長による論考。
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これも元日銀。先程のよりは易しい
湯本 雅士 デフレ下の金融・財政・為替政策――中央銀行に出来ることは何か
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最近の感情的な日銀バッシングは読むに耐えませんが、冷静に議論していた時代の記録。若き日の白川総裁も登場します
金融政策論議の争点
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金融政策の勉強は趣味なので細かい点はご容赦を。
本業は租税法で、最近の関心は金融業と付加価値税ですw