すらすら日記。

すらすら☆

言葉で、語れないことも。

英国で現代史を講じるメリデール教授が
200人を超える元赤軍兵士たちにインタビューし
ソ連崩壊後に公開が始まった資料にもあたって
まとめた「イワン(ロシア兵の俗称)」の実像です。

イワンの戦争 赤軍兵士の記録1939-45

イワンの戦争 赤軍兵士の記録1939-45

大戦中からブレジネフ時代にかけて形成された「神話的英雄」である
赤軍兵士の虚像では無く、生身の兵士が戦場で何を感じ、
どのように戦い、傷ついて死んでいったかの壮大なノンフィクションと
なっております。
もう高齢となっている元兵士たちは、自分自身の生きた価値、
人生の意味を再確認するためにも、戦場での略奪暴行などの
生の事実は認めようとせず、自ら公式見解を繰り返したりもします。
記憶と宣伝が混同しており、それは無意識のものでもあると。
それでも、戦後ソ連社会で冷遇されたユダヤ系の兵士や
少数民族出身の元兵士は、素直に語っていたりもします。

生身の証言も多いのですが、
本書の最後の部分で独ソ合わせて千両以上の戦車が激突した
激戦地プロホロフカで、年老いた元兵士が無言で涙を流す場面は
印象的でした。

言葉では、語れないということなのでしょう。

農業集団化で凄惨な迫害を受けた農民がいた一方、
帝政時代では無学文盲のまま単純労働の生涯を終えたであろう
若者が、ボリシェビキ革命の社会変革により、
技術を身につけ、軍隊で立身出世を果たしていく物語も登場します。

ソ連邦共産主義の歴史は、まだまだ解明されていない部分が
多くあります。
500頁近い大著ですが、歴史に関心のある方々に一読をお勧めします。

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