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ゼミナール現代会計入門・演習課題(その5)

第5回です。

ゼミナール現代会計入門 〈第9版〉

ゼミナール現代会計入門 〈第9版〉


問題①
同一項目を営業外損益に区分している企業と、特別利益に区分している企業を同一の産業から選びなさい。そのうえで、なぜ開示区分が異なるのか、その違いがもたらす問題点は何かについて検討しなさい。

 固定資産の売却益は、日本会計基準を採用しているシャープは特別利益に計上しているが、米国会計基準を採用しているソニーでは営業利益段階に計上している。これは、米国会計基準においては「特別利益」に計上されるものが極めて限定されているためであるのに対し、一般の日本基準では企業会計原則に従い特別利益に計上することとされているためである。
 同じ固定資産の売却益の計上段階の違いにより、「本業の利益」を表示するとされる営業利益に含まれる内容が異なってしまうことになる。営業利益は株価形成に有用な情報とも言われているが、採用する会計基準により表示が異なり、企業間の比較可能性にバイアスをもたらす可能性があるともいえる。


問題②
包括利益のように、未実現の評価差額を一会計期間の企業業績に含めることの是非を論じなさい。

 その他の包括利益には、その他有価証券の評価差額や為替換算差額、繰延ヘッジ会計適用時のヘッジ手段の評価差額、退職給付にかかる調整額など、いずれも経営者の裁量・判断が及ばない市場における時価(公正価値)の変動が原因で増減する項目が多い。
 企業評価の目的の一つは、企業経営者の能力を評価することにあることも考えると市場の時価変動で大きく増減してしまう未実現の評価差額である包括利益を企業業績に含めることは、ミスリードしてしまう可能性があると考えられる。特に、日本においては事業提携や敵対的買収防止策としての株式持合(政策投資株式)が依然として広く行われているほか、海外展開している企業においては為替換算の影響も大きいため、この問題の影響はかなりの程度のものになると思われる。


問題③
企業評価を行ううえで、企業利益とキャッシュ・フローのどちらが優れているか。あるいは、あなたが投資家だったらどちらの指標を利用するか。それぞれの長所と短所を指摘しなさい。


 会計利益は「意見」、キャッシュは「事実」であるといわれる。
今日の財務報告基準は各種引当金の計上、時価(公正価値)の測定など極めて見積り要素が多く、経営者が採用した会計方針によりある程度、当期純利益を増減させることが可能となっている。当期純利益は、経営者の裁量により操作可能の余地があるという短所があるわけである(これを会計情報の硬度が低いとも称する)。
もちろん、財務報告は独立した会計監査人の監査を通しており、あまりに恣意的な会計処理を採用することはできないし、採用した会計方針は有価証券報告書などで開示されている。しかし、投資家など外部の利害関係者が、今日の財務報告制度開示レベルの会計方針で、「経営者の裁量の意図と効果」を読み取ることは困難であるとも考えられる。
一方、キャッシュ・フローは事実であり、計算過程において経営者の判断や見積りといった裁量の余地が少なく、経営者が採用する会計方針により左右され得る会計利益よりも、会計情報としての硬度が高いという長所がある。
この比較から、投資家としてはキャッシュ・フローを重視して採用したいと考える。
ただし、キャッシュ・フローも会計利益と同じく「過去の情報」であることに変わりは無いという短所を持っている。企業評価にあたっては、企業の将来のキャッシュ・インフロー生成能力を含んで表示されている資産と、アウト・フローを含んで表示している負債を納めた貸借対照表を合せて分析することも重要であると考えられる。


続きます。

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