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「財政再建」というお薬を正しく服用するためには・・

本日のお題はこちら。

アベノミクスでも消費税は25%を超える (PHPビジネス新書)

アベノミクスでも消費税は25%を超える (PHPビジネス新書)

タイトルに「アベノミクスでも~」とありますが、本書は金融政策の話は少ししか登場せず、大部分が財政再建社会保障改革の話です。
新書サイズで、わずか300ページ余りの小著で大きなテーマを扱っております。
巷に流布する「経済成長すれば増税は必要ない」などの説に反論を行っておりますが、一般向けであり、専門書では無いので議論がやや粗い部分があると感じられました。


私はマクロ経済学社会保障制度には通じておりませんので、全編に渡っては「議論が粗い」とは断言できませんが、税制と財政の仕組みには少々知識がありますので、2、3気付いたところを述べます。
消費税の1%引上げと所得税の最低税率(5%)を並べた上で、その税率1%引上げが税収増加にもたらすインパクトを比較し、所得税では効果が少ないから消費税を選ぶべき、という論理展開は「比較できないもの同士」の1%を比較しているという点でフェアではありません。
また、医療費の消費税非課税制度は「真の意味での非課税ではなく、仕入れ税額控除ができないので患者の医療費へ転嫁されている」という論の展開は、社会保険適用の診療報酬が公定価格であり、制度上転嫁が不可能であるという重大な問題点に触れておらず、単純化し過ぎです。*1


自分が通じている部分について議論の粗さに気付くと、他の記述の信頼性にも疑問符がついてしまいます。
それでも、このサイズの本で簡潔に読めるものは意外にも他には見当たりません。
著者の主張に賛成するにせよ、反対するにせよ、問題点を整理するためには良い本だと思います。
一部の過激な主張をする方以外は、「財政再建」には総論では賛成でしょう。
そのお薬をどう処方して服用すればいいのか。
専門書に入る前に考える第一歩として、手頃であると思います。

*1:実際には消費税引き上げの際に診療報酬の公定価格が仕入税額控除できないことに対応して引上げされていますが、医療業界は不十分であると批判しておりますし、もはや「溶け込んでしまって」おり十分なのか、検証不能になっています。

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