日本の中小企業の映し絵として。
本日のお題はこちら。
- 作者: 林原健
- 出版社/メーカー: 日経BP社
- 発売日: 2014/05/16
- メディア: 単行本
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独創的な研究開発に多額の資金を投じてインターフェロンやトレハロースなどの商品化に成功し、同族企業の雄と称えられていたバイオ企業林原。
実は25年以上から債務超過を隠すために粉飾決算を行っており、それが発覚して会社更生法申請へと至った経緯は記憶に新しいです。
著者は50年以上に渡って社長を務めた林原健氏。
研究一筋で、経理面は弟に任せっぱなしで、研究開発には資金を惜しまない一方、売上高や借入金残高すら把握しておらず、株主総会も取締役会も一度も開いたことが無いというワンマン経営を行っていました。
実はバブル崩壊前後の1990年代初頭には既に連続赤字・債務超過となっており、近年のトレハロースの成功で単年度黒字にはなっていましたが、メインの中国銀行と準メインの住友信託銀行には別々の決算書を提出するなど、複雑な粉飾決算を続けておりました。
林原健氏は、自分と弟(専務で経理担当であった)とのコミュニケーション不足を破綻の原因としていますが、なぜ債務超過になってしまったのか、なぜ粉飾決算が発覚し破綻へと至ったのか、本書を通読してもその原因はわかりませんでした。
林原一族は会社更生法とともに退任しますが、会社自体は長瀬産業というスポンサーで再生し、従業員の雇用は守られ、研究開発も続いていくようです。
日本の同族企業は、公開大法人のような監査も受けていませんし、取締役会の開催などの会社法の決まりなど守っていないでしょう。
200ページほどの小著ですが、日本の同族企業の映し絵の姿を知ることができるかと思います。