どんな生き方を税制で支援するべき?
子育て系NPO法人の方が、個人事業者が仕事中に子どもを預ける費用も所得計算にあたっての控除として認めるべきだ、という趣旨のtweetが流れてきたのを見かけました。
「所得」というのは、ざっくり言いますと収入から経費を差し引いて残った部分のことです。
この場合の経費は、収入を得るために必要な支出であったことが要件なので、「必要経費」とも呼ばれるわけで、何が必要経費になるのかは、税法や通達で詳細に定められています。*1
法人の会計上の費用が別段の定めがない限りすべて「損金」となるのは、もともと収益獲得のために設立されている法人に事業関連性が無い費用は無いという企業会計上の考えから来ております。
一方、個人は事業を営む他に家事(日常生活)があるわけで、支出のうちどの部分が収入を得るために要したものかを判定することはなかなか難しいものがあります。*2
個人事業主の必要経費をどこまで認めるのかって、理論的に厳格に切れる性質ではありません。
これは立法政策の問題の領域で、何を控除することが公平負担の理念にかなうのかに左右されるのではないかと。
私が危惧するのは、必ずしも社会の多数の代弁者ではない一部の声の大きい方(例:先ほどの休眠くん)などが立法過程に影響を及ぼして税制全体を歪めてしまうことです。
どんな働き方か(個人事業主か給与所得か)、どんな家族構成か(独身なのか共働きなのか、専業主婦なのか)などの選択に対して税制が中立であることが本来、望ましいと考えております。
「俺に補助金をよこせ」というのは相当の厚顔さが必要ですが、「税制で配慮すべき」という発言はよく聞きます。
しかし、補助金と所得控除の経済的な効果はよく似ています。
子育てを社会全体で行うべき、という総論には私も賛成します。
しかし、その手段として個々の個人事業主の子育て費用の必要経費控除を認めるべきというのは別の「不公平」の問題を惹起するだけで、あまり良い手段とは思えません。
繰り返しになりますが、税はあくまで人々の選択に対し、できる限り中立であるべきです。
私にとって、どんな生き方をすべきか、それを政府に要請されたり指示されたりするのは嫌だと思っていますし、それを他者に強制したり誘導したりするのもしたくないと思います。