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タックス・ヘイブンによる富の浸食とどう戦う?

本日のお題はこちら。

失われた国家の富:タックス・ヘイブンの経済学

失われた国家の富:タックス・ヘイブンの経済学

世界中の公的な資金循環の統計を突き合わせてみると、何に投資/融資されているかという世界中の資産と、その投融資が何から調達されているかという世界中の負債を比較すると、負債の方が少なく、どこから調達されているのか不明であるそうです。
火星人から資本・負債を調達しているのでない限り説明ができない・・というわけではありません。

これは、税率が著しく低いか、まったく税金が存在しないタックス・ヘイブンに富裕層や多国籍企業が富を隠しているためであると。
タックス・ヘイブンは、ただ単に税金が安いだけでは無く、課税に必要な情報が不透明であるとの特徴があり、これで公的な統計データからは「消失」しているという説明になります。

タックス・ヘイブンの存在は、本来は課税されて国庫に納められるべき税収が失われ、公的債務の増大と社会格差の原因となっていると指摘されております。
著者のズックマンは、あのピケティの弟子だそうでして、このタックス・ヘイブンに対し次の4つの提案を本書で説いております。

①全世界規模での金融資産台帳の作成
タックス・ヘイブンに対する金融面・貿易面での制裁措置*1
③金融資産台帳をもとにしたグローバルな資産課税
④多国籍企業課税についての定式配分法の導入*2

フランスで、専門家ではない一般の読者向けに書かれた小著でわずか170ページほどですので、この問題に詳しくない方でも、タックス・ヘイブンの問題とその対策についてコンパクトに知ることができます。
日本に関連することについても、巻末の渡辺智之一橋大教授がわかりやすく補足しております。

*1:自由貿易に反しますので、実際には威嚇だけで制裁関税は発動されないことが望ましいとしています。

*2:アップル・グーグル・アマゾン・スターバックスなど多国籍企業の利益移転テクニックに対抗するため、利益では無く、売上高や生産設備などの操作しにくいパラメーターで定式で各国に税額を配分しようとする方式。利益に課税し外国税額控除方式などで調整する現在の国際課税の仕組みとは大きく異なります。詳しくは渡辺教授の本書解説をお読みください。

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