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レッテル貼りじゃなく、「ナチズム」を理解するために。

本日のお題はこちら。

ヒトラーとナチ・ドイツ (講談社現代新書)

ヒトラーとナチ・ドイツ (講談社現代新書)

日本でも社会の統合というものがだんだん崩れてきたのか、敵対する政治党派に対してレッテル貼りとして「ナチだ!」とか「ヒトラーのような奴だ!」という罵倒を投げつけ合っているのを見掛けます。


そこでは、ヒトラーナチズムも「絶対悪」としての記号としての意味しかなしておらず、その敵対する政治党派がどのようにナチズムと似ているのか、たいして考えられていないように思われます。


本書は、最新の研究成果も踏まえ、ヒトラーナチス・ドイツがどのような人物・運動・国家であり、何をなしてきたのかを一般の読者にもわかりやすく紹介しております。


ネタばれになりますが、印象に残りました部分を一つだけ。
ナチス政権は1933年から1945年までのわずか12年で、後半の6年は戦争でした。
1951年、西ドイツにアンケートしたところ、前半の6年が「ドイツ史の中でうまくいっていた時代だった」と答えた人々が40%あまりで、*1これは帝政時代の45%に次ぐ高さだった、という結果です。

ナチス政権前半6年では、戦争こそなかったものの共産党社会民主党など他の政党は禁止され、ユダヤ人への迫害も始まり、人権は極めて制限された状態でした。
それにもかかわらず、ドイツ人たちは「うまくいっていた時代」と答えたわけです。


逆に、理想的な民主憲法を持っていたとされるワイマール時代(1919年~1932年)が「うまくいっていた」と答えたのはわずか7%。


戦争さえしなければ、ナチス政権は「うまくやっていた」と評価されているわけです。
なぜ、このような答えが出てきたかは本書をお読みいただくことになりますが、人々は「分断と混乱」よりも「統合と安定」を望むのだな、と。


レッテル貼りではなく、ヒトラーナチスが何をなしてたのか。
実際に知るために手頃な一冊であると思われます。


*1:戦争に突入していたナチス政権後半がよかったする答えは2%あまり。

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