すらすら日記。

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誰から、どうやって税金を徴収する?

改正マイナンバー法が国会で可決されました。www3.nhk.or.jp

これに先立ちまして、「マイナンバーが導入されれば個人の所得や財産の保有状況がすべて明らかとなり、徴税が強化される!」などというセンセーショナルな記事も散見されるようになっていました。

銀行口座の全てにマイナンバーを義務付けるかどうかは、まだだいぶ先の話です。
どこまで、個人の持つ情報を政府に渡すかは、最終的には国会議員の選挙などを通しての国民自身の選択となるわけです。


立教大学の浅妻教授(租税法)がこんなことを書かれています。

(政府が集める個人情報を)減らす方向として、徴税に関しては仕向地主義型付加価値税*1への依存を強め、社会保障に関してはベーシックインカム負の所得税の方向性を志向することになろう。


そして、

付加価値税(消費税)に頼ることは所得や財産への課税を諦めるということであり、富豪が銀行秘密の強い国に財産を貯め込むといったことについての対策を諦めることである。

と。*2


我が国での所得税累進課税の強化、相続税基礎控除縮小、出国税の創設など高所得層への課税は強化されておりますし、世界的にもBEPS(税源浸食と利益移転)対策など、所得・資産課税はまだまだ諦めてはいないようです。


しかし、無国籍的な大企業や高所得者層の租税回避スキームの巧妙さをみるに、これは絶望的な抵抗じゃないかと思うことも。


マイナンバーは徴税のためだけではありませんが、その大きな目的の一つであることは確かです。
将来の選択のために、考えてかなきゃならないと思っております。


紹介しました「ジュリスト」2015年8月号は「企業課税の最新動向」特集ですが、少々難しいと思われます。
税の専門家ではない、一般の方でも読めそうな新書をいくつか。

多国籍(無国籍)大企業や富裕層の租税回避などの実態について。用語の使い方が厳密では無く、引用されている統計データにも一部疑問がありますが、一般向けとしてはコンパクトではないかと。


タックスヘイブン租税回避地。税金天国ではありません)の実態について。道義的怒りから少々筆が滑っているのではないかと思われる部分も有りますが、本書でタックスヘイブンの実態を知れば著者の怒りも十分に納得できると思われます。

タックスヘイブンについては過去ログのこちらも。sura-taro.hatenablog.com


三木義一教授のこちら。

日本の納税者 (岩波新書)

日本の納税者 (岩波新書)

日本の納税者が源泉徴収制度などに代表される税制の仕組みから、いかに税金について無関心・無権利状態に置かれているか告発する書。


この辺は税制の専門家でなくてもじゅうぶん、読めると思います。
税金とは、「よくわからないけど、無理やり取られるもの」というイメージしかないかと思いますが、マイナンバー制度の是非・拡充の方向なども含め、市民として考えるために。


*1:日本の消費税や、欧州でのVATなどに代表される税制で、国内でのあらゆる財・サービスの消費に課税し、輸出に関しては免税する仕組みの税金。流通過程での仕入税は控除されるので、経済に対する中立性が高いとされる。アメリカを除きほぼ全世界的に施行されています。

*2:浅妻章如「税務情報 マイナンバー、文書化」ジュリスト1483号(2015年8月号)、53頁。ジュリストは大きめの公共図書館なら必ず備えられているはずですので、全文をぜひ。

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