簡単には死なない/死ねないという残酷な現実について。
本日のお題はこちら。
- 作者: NHKスペシャル取材班
- 出版社/メーカー: 新潮社
- 発売日: 2015/07/10
- メディア: 単行本(ソフトカバー)
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年を重ねて、いよいよ死期が迫ったら、1週間くらい臥せって、その時には大勢の子供や孫達がお見舞いに来てくれて、幸せだった人生の思い出を思い返しながら安らかに無くなる。
こんな最期を迎えられるのはごくごく少数ではないかと思われます。
生活保護世帯が過去最高、という報道をよく目にしますが、保護水準以下(年間120万円)以下の年金収入しかないにもかかわらず、保護を受けずに生活している一人暮らし世帯はおよそ200万人あまり。
その多くが、高齢者です。
そもそも結婚しなかったか、配偶者に先立たれて一人きり。
そして、多くは国民年金だけなので、1カ月あたり6万円前後しか年金がない。*1
高齢になれば、誰もがどこかに疾病を抱えて、痛みや苦しみを感じています。
さらに年金がなければ病院も我慢し、お金がかかるため人づきあいも避け、社交を結ぶこともままならない。
社会から「排除」され、いないものとして扱われてしまうわけです。
この本には「もう死んでしまいたい」という貧困に苦しむ高齢者の声が何度も出てきます。
でも、貧困から本当に死んでしまう方はごくわずかで、多くの高齢者は医療・介護制度や福祉に(命だけは)助けてもらっています。
それでも、お金がないがゆえに病院にかからず痛みを我慢し、お金がないがゆえに社会から排除されて孤独な状況はほとんどの場合、変わりません。
本書では、「簡単には死なない/死ねないという残酷な現実」を紹介するだけで、解決策の提言などはありません。
私にも、具体的な解決策は思いつけません。
それでも、多くの方が「残酷な現実」を知るだけで、貧困は自己責任だけでは無く誰もが陥る可能性があり、生活保護制度などに対する社会的差別を緩和することができるのではないでしょうか。
*1:満額で年間78万円あまり、未納が多くこれ以下の方が多いと聞きます。