コーポレートガバナンスなんて、偉い人とエリート社員だけの問題?
本日のお題はこちら。
- 作者: 松田千恵子
- 出版社/メーカー: 日経BP社
- 発売日: 2015/08/11
- メディア: Kindle版
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「コーポレートガバナンス」なんて、取締役とか偉い人と経営企画とかのエリートが対応する話で、自分たちには関係ないんじゃない?と思っている方が多数ではないかと思われます。
確かに、社外取締役の確保とかは経営トップ層の仕事ですし、東証に提出を求められるコーポレートガバナンス報告書を「どう書くか」というのは企画や総務部門の担当でしょう。
しかし、本書の冒頭で紹介されているとおり、ガバナンスの仕組みは経営者や企画・管理部門の一部の幹部社員がつくるものではなりません。
一般従業員であっても労働組合での意見交換や内部通報制度、内部監査などガバナンスの一環を担っておりますし、また何よりもコーポレートガバナンスの仕組みに基づいて一市民、一投資家として企業をよりよく律することで、その結果企業価値が向上し利益を受けるる・・・というように、すべての人が利害関係をもっています。
本書は、「コーポレートガバナンスの教科書」とのタイトルですが、目先の課題であるコーポレートガバナンス報告書の書き方とか、社内のモデル組織とかの「ひながた」を示してくれるわけじゃないし、会社法改正とか東証規則改正についてもちらっとしか触れられていません。
むしろ、上記で述べたような一般の従業員とか市民・投資家で・・・
コーポレートガバナンスって何?
どうしてこんな制度を?
どういう効果を狙っているの?
というような基本を、まるでセミナーを聴いているようにすらすら理解できます。
理論的な厳密性には必ずしもこだわっておりませんので、*1本書だけでは実務には取り組めませんが、忙しい偉い人にも、直接は担当していない方にもまず最初の1冊としてお勧めしたいと思います。
*1:過去において、メインバンク制がコーポレートガバナンスを「代行」していたという通念が紹介されていますが、これは実証研究で否定されています。