「指令」はダメだけど、「誘導」はOK?
官房長官の発言が話題になっているようです。mainichi.jp
このような発言は、人々の価値観・規範意識に直接、触れるものなので、時に激しい怒りを招き寄せたりもします。
為政者は、国を維持していかなきゃならない責務があり、維持するだけじゃなくて、自分の価値観に合せて政治を行っていくわけですが、人々の私生活にどこまで介入できるのかというのは難しい問題です。
現政府は、賃上げや内部留保の活用などを要請するなど、私的自治の世界へ「指令」したがるような傾向があるように思われます。
これが、経済政策の一環ならば、まだ許容できる余地があるのかもしれません。
私には少子化問題全般についてコメントできるだけの知見はありませんが、いつものように税制について少しだけ。
国家(時の政府)にとって望ましい選択が優遇されるのではなく、どのような選択をしても税制/社会保障が中立であるような制度設計を希望いたします
— すらたろう (@sura_taro) 2015, 9月 29
子育て優遇税制とかが提案されることがありますが、それは人々の生き方に対して中立ではありません。
税は、公共政策に必要とされる資金を調達するためのものですが、しばしば、中立の租税原則に反して政策目的に使用されます。
日本では、現金直接給付は嫌われていますので、所得控除などで人々を「政府が望む方向」へ誘導しようという制度がよく使われるわけです。
しかし、このような誘導目的の税制が多数実施されると、結果として税収が減少し、政府が取れる政策が予算制約に直面してしまうことになります。
優遇税制による誘導と、政府の予算制約が狭まることによる政策手段の限定について、真剣に比較・検討して新しい制度が提案されているのでしょうか?
税にはそもそもの目的があります。
人々の行動を誘導するような、付随的で、過大な期待を税制に抱くのは慎むべきではないかと考えております。