「詰んでいる日々」を安寧に暮らすか、荒海に放り出されるか?
S君は時代が昭和から平成へ代わる頃。
そう、バブルの終る頃に社会人になりました。
大量採用の時代だったので、同期入社は多かったのですが、どんどん辞めていって、気づけば残っているのは半分ちょっとくらいでしょうか。
さて、S君も40代後半にさしかかり、昔であればもう管理職になってもいい年代です。
ところが、定年延長や再雇用制度の影響もあり、まだ管理職の中心は50代後半から60歳近くの方々ばかり。
その上の偉い人( )になるともう60歳を過ぎたおじいちゃんばかりです。
また、政府からの「指令」に応えて女性管理職の数値目標まで出てきました。
人口減少が続く中、会社自体の成長なんて望めず、営業拠点が少しづつ減り、組織がどんどんフラット化して管理職のポストは減る一方です。
S君は、自分の能力や社内での評価も考え、これはもう無理だな、と感じました。
悪いことは重なりまして、S君の下の30代後半から40前後の社員は、就職氷河期世代で極端に人数が少ない状態です。
S君は、もう時代についていけないおじいちゃん管理職に「決めさせる」ための「ご説明」をしつつ、現場仕事も掛け持ちして手を動かさなきゃなりません。
どっちを向いても、「詰まって」いることは明らかです。
ふと、昔、興味本位で読んだ「希望は、戦争」という本を思い出しました。
どんづまりの社会の閉塞で絶望する方が、社会の流動化を起こすために戦争を望む、なんていうあれですね。
いえいえ、戦争なんか起きなくても、かつては無風であったS君の業界にも再編の圧力がひたひたと押し寄せてきています。
他業界ではもう当たり前になった事態が、ようやく迫ってきているようです。
嵐が起きれば、弱い順番に船から振り落とされて荒海に放り出されるとか。
希望の無い詰んでいる日々の中で生きるか。
それとも・・
S君の選択はどうなるのでしょうか。