不正は「会社のため」じゃなく、私心・私欲の闇によるのではないかというお話。
本日のお題はこちら。
- 作者: 今沢真
- 出版社/メーカー: 毎日新聞出版
- 発売日: 2016/01/30
- メディア: Kindle版
- この商品を含むブログを見る
本書は、東芝の不正会計について、発覚から現在までを毎日新聞社の論説委員であり、web上の「経済プレミア」の編集長である記者がまとめたものです。
内部告発による不正発覚から、第三者委員会の報告、迷走する経営陣の情報開示、米国子会社(原子力事業)ウェスチングハウス社の「のれん」減損、新日本監査法人のずさんな会計監査の問題まで、時系列で丁寧に整理・編集されております。
もともとweb上の「経済プレミア」連載を加筆・修正して編集したものであり、その時々の報道や東芝の開示資料を追っていた方であれば、新事実や新しい独自の視点というものはそれほど無いと思われます。
しかし、やはり大新聞の取材力・編集能力は優れたものであり、事実関係などごちゃごちゃしていたのが整理できました。
本書を読みましても、結局、不正行為の動機についてははっきりしないままでした。
最初の内部告発は、東芝社内の派閥抗争がきっかけで相手陣営を貶めるために仕組まれたとも言われます。
東芝の不正に限らず、オリンパスなど近年相次いだ企業不祥事について、「私腹を肥やすつもりはなかった」「会社のためだった」などという言い訳の声も聞こえます。
しかし、不正をはたらいた経営者たちは、社内や経団連での地位・権力に執着し、それを失いたくないがゆえに不正行為に走った一面もあります。
それは、ちまちました財産利得などの横領行為などとは次元が異なる巨大な「私心・私欲」の闇ではないか。
人間の心の闇を防ぐためには、いくらガバナンスや監査の仕組みを整備しても難しいのではないか。
あらためて、そのことを感じております。