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マイナス金利の国債でも利益が出せるお話。

先日の日銀政策決定会合で2月16日から日銀当座預金の一定額以上にマイナス金利を付すという決定がされ、さらに世界的なリスクオフで金利が急低下しております。

雑誌にも特集記事が組まれ始めましたね。


本日、とうとう長期金利の指標である10年国債の利回りがマイナスを付ける場面がありました。
16:00分現在の価格を見ましたとこと、10年国債はクーポン0.3%、価格103.45、利回りマイナス0.05%となっています。

価格103.45というのは、額面100円あたりの国債の値段のことで、100万円分国債を買おうとすると、103万4,500円出さないといけないことを示しております。

一方、クーポン(利息)は0.3%ですから、100万円分国債を購入すると100万×0.3%で年に3,000円もらえることになります。

10年物ですから、10年間で利息は3万円で、最後に元本100万円がかえってきます。

先ほど購入時に103万4,500円払いましたから、103万4,500円-103万円で、4,500円の損失です。

10年間100万円を運用したのに、利益がでるどころか、逆に利回りがマイナスになってしまいました。

しかし、この計算は満期まで国債を持っていた場合の話です。*1

国債は日々、ものすごい量の売買取引が市場で行われています。

誰かが、最初に出した103万4,500円よりも高く買ってくれると思えば、これを買う意味はあるわけです。

別の銀行が、104万円で買う!と注文をだしてくれればちゃんと利益がでます。*2

その104万円で買った銀行は、105万円で別の銀行に転売できると思えば・・ということで以下、繰り返し。

こんなの、バブル期の不動産転売に似たババ抜きゲームです。

転売を繰り返して、最後にジョーカーを掴んだ金融機関が、損失を出してしまいます。

「自分の買い値よりも高く買ってくれる方が必ず現れる」というのは不動産転売ゲームではあり得ず、いつかは詰まってしまいました。


しかし、国債の場合、日本銀行が控えており、国債の市場買入(=民間銀行などからの買取)を大量に行っています。*3

日本銀行が、自社の買い値よりも高い値段で国債を購入してくれれば、民間銀行はジョーカーを握ったままロスを出すことはないわけです。

日本銀行も、政府からは約束した利率でしかクーポンをもらえませんし、最後に元本が償還されても損失です。

これは、最終的に日銀利益の減少=国庫納付の減少などの形で、国民が負担することになりますね。

この先がどうなるかは、私の専門である会計実務・金融実務のお話ではなく、金融経済学・マクロ経済学などの領域ですので、なんともわかりません。

マイナス金利の経済的帰結につきましては、経済学の専門家の解説がポツポツではじめておりますので、そちらを読んで、考えていきたいと思います。


合せて、こちらもご覧ください。

sura-taro.hatenablog.com


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*1:これは単純化でして、実務では、会計処理のルールにより、決算期ごとに額面を超過している部分は償却原価法(アモチゼーション)を適用して償却しなければなりません(利息のマイナス表示)。そのため、国債を満期まで保有しなくても、単年度でも利回りはマイナスになってしまいます。

*2:本記事はわかりやすさを優先して単純化しています。実際には、金融機関が国債に投資する理由は、利息の受取りや売却益目的だけではなく、担保として差入するためだったり、日本銀行当座預金のマイナス0.1%よりもマイナス幅が小さかったり・・といろいろあります。

*3:日本銀行は、日銀当座預金のマイナス金利による民間銀行の損失・収益減少は、この国債買入(民間銀行からみると売却)で相殺され得るとアナウンスしております。

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