すらすら日記。

すらすら☆

戦争は男の英雄たちだけが戦ったわけではないというお話。

本日のお題はこちら。

戦争は女の顔をしていない (岩波現代文庫)

戦争は女の顔をしていない (岩波現代文庫)

作者スヴェトラーナ・アレクシエーヴィチは2015年にノーベル文学賞を受賞したベラルーシ出身のジャーナリスト・作家です。
大祖国戦争独ソ戦、1941年6月~1945年5月)では、赤軍ソ連軍)に100万人を超える女性たちが従軍し、男たちと共に戦いに参加しました。
女性が従軍といいましても、医師や看護師、衛生兵として非武装で軍に参加しただけでは無く・・

ある者は狙撃手として数十人のドイツ兵を射殺し、

ある者は工兵隊の小隊長として地雷原を切り開き、

ある者は爆撃機の爆撃手として一晩に何度も夜間爆撃に出撃し、

ある者はパルチザンとして沼地と森の中で戦いました。


本書は、数百人にのぼる元女性従軍者にインタビューし、書き起こしてまとめたものです。

断片的な回想が延々と続きますが、間々に著者の短い文章が挟まれ、全体として戦争の姿が浮かび上がってくるようになっております。

4年に渡る地上戦で、ソ連では2000万人とも言われる死者を出し、村々は焼き払われ、生き残った人々もひどい心の傷を負いました。*1

女性の戦争参加は、「祖国防衛のために英雄的に戦った赤軍」の正史のなかでは長らくタブーとされ、ソビエト時代は本書は刊行されませんでした。

また、欧州最悪の独裁政権であるとされるベラルーシではいまだに禁書扱いだとも。


ソ連では、日常で暮らしていた村々がすべて戦場となり、しかも4年という長期間にわたりました。

その戦争のすさまじさは、言葉に尽くせるものではありませんが、それを語り、残しておきたいという女性元従軍者たちの声を。

死が日常である戦争の回想であり、残酷な場面もありますが、知られていない歴史の1ページとして、ぜひ。



*1:懲罰大隊の実態や、部隊後方で退却しようとする兵士を射殺したりしたNKVDの督戦隊の様子も、長い間タブーでした。

すらすら日記。は、Amazon.co.jpを宣伝しリンクすることによってサイトが紹介料を獲得できる手段を提供することを目的に設定されたアフィリエイト宣伝プログラムである、Amazonアソシエイト・プログラムの参加者です。