すらすら日記。

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銀行の投資信託販売を複式簿記で示してみる。

本日のお題はこちら。

難しいことはわかりませんが、お金の増やし方を教えてください!

難しいことはわかりませんが、お金の増やし方を教えてください!

最初の部分から引用いたします。

お金を正しく運用したかったら銀行には近づかないほうがいい・・銀行には買うべき商品は一つもないから、銀行の窓口では金融商品を買うべきではない

こちらはあくまで著者の山崎元氏の意見です。

私は「中の人」ですので、こちらに賛成しても反対してもいずれにせよ「ポジショントークだ」との誹りを甘受せざるを得ないでしょう。

ここでは、会計的事実を写像する複式簿記という技術を用い、この意見を検証してみます。

特定の金融機関の販売している具体的な商品名を出すのは差し障りがありますので、架空の商品である「ブラジルレアル建て欧州ハイイールドボンドファンド、愛称:ユーロれある君」に登場してもらいましょう。

「ユーロれある君」は、購入時手数料3.24%、信託報酬2.16%(いずれも消費税込み)になっています。
こちらの手数料水準は、銀行の窓口で販売されている投資信託として一般的なものですね。

退職金をもらったXさんは、窓口の美人行員に勧められるまま、「ユーロれある君」を1000万円投資することに決めました。

「このファンドは、主にヨーロッパ各国の格付BB以下の企業が発行する債券を投資対象とします。そのため、デフォルトリスクが高いですが高水準の利回りを追求することができます。債券はユーロ建てで発行されていますが、これを売り予約してレアル建ての買いを建てることで発行通貨との金利差相当額のプレミアムが・・&%$?!%$QJ&」

・・Xさんは投資経験もなく、金融知識も乏しいため、何がなんだかわかりません。
上のような説明が続き、リスクだとか手数料の中身だとか言われましたが、内容がほとんど理解できませんでした。
でも、質問したら無知だと思われて恥ずかしい。黙っていました。

ただ、窓口美人行員の「ユーロれある君が今、いちばん売れ筋ですよ。過去の実績ですが、毎月1万口あたり100円の分配金を出しております・・これは将来に渡り同じ水準の分配を約束するものではな・・」との説明を聞いて、購入を決めました。

Xさんは普通預金口座から1000万円払い出しする伝票を記入し、たくさんの書類に署名捺印しました。さて、この1000万円がそのまま「ヨーロッパ各国の格付BB以下の企業が発行する債券」の運用に回る・・のではありません。

まずは、手数料が3.24%差し引かれます。

(借方)普通預金 10,000,000/(貸方)振込    9,686,169
               (貸方)受入手数料 290,585
(貸方)仮受消費税  23,246

これが「ユーロれある君」を販売した銀行の仕訳です。

投資信託は銀行のバランスシートに計上されず、外部の信託銀行で分別保管されて運用されることになります。振込、というのは最終的に信託銀行へ振り向けられる金額を表しております。

Xさんは1,000万円を投資したつもりでしたが、手数料と消費税を3.24%、合わせて31万円以上差し引かれて、968万円になってしまいました。
この968万円がXさんのものになりますね。29万円が販売した銀行の手数料になります。

そして、968万円からは、運用の成果にかかわらず、毎日毎日その2.16%(年率、消費税込)が差し引かれます。1年間で約20万円も手数料が引かれてしまうのです(実際には値動きがありますので、信託財産の価格が上昇すればそれに連れて手数料も増えますし、下落すれば手数料は減ります)。
仮に、運用成果がゼロで、968万円のままで20万円手数料が差し引かれたとすると、Xさんの財産は948万円になってしまいます。

(借方)振込 216,000/(貸方)受入手数料 200,000
            (貸方)仮受消費税 16,000

振込、というのはXさんが信託銀行に預けてある財産から差し引かれて、販売した銀行・実際に運用を行う委託会社・財産を保管している信託銀行の間で分け合うことになりますね。(この他に有価証券売買や監査などの費用もXさんが負担することになります。ちゃんと説明されているはずですが・・Xさんはきちんと理解して覚えているでしょうか)

ずいぶん手数料が差し引かれてしまいましたね。これを「取り戻す」ためには、そうとうの運用成果をあげなければならないことがわかるでしょう。

さて、山崎氏が勧めるTOPIXインデックスファンドの手数料ですが、一般的に販売手数料ゼロ、信託報酬0.54%程度のものが多いですね。

まずは購入時の仕訳です。

借方)普通預金 10,000,000/(貸方)振込 10,000,000

販売時の手数料はゼロですので、1000万円がまるまる運用、ここでは東京証券取引所に上場している全株式の値動きに連動するように、株式の買い付けにまわることになります。

次に、信託報酬0.54%ですので、年間の手数料は5万円程度ということですね。

(借方)振込 54,000/(貸方)受入手数料 54,000

さてさて、銀行で購入した「ユーロれある君」、最初の1年間で銀行に約50万円の手数料を支払うことになります(一部は委託会社、信託銀行に回ります)。
山崎氏の勧めるTOPIXインデックスファンドでは年間5万円です。

なお、銀行に行っても「ユーロれある君」なんか購入しないで、TOPIXインデックスファンドを購入すればいいのでは?と思われるかもしれません。
美人行員に説明してもらえるわけだし。
でも、なぜか販売手数料ゼロ、信託報酬0.54%ではなく、販売手数料2.16%、信託報酬0.824%などいう設定になっていることも。

まったく同じ投資対象と運用方法であるにもかかわらず。なぜか。

最大の問題は、窓口の美人行員は、なぜかTOPIXインデックスファンドではなく「ユーロれある君」を勧めてくることが多いです。

その理由は、本記事を読んでいただければ、わかるのではないかと思います。


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