他者との適正な距離感を取るためには。
話題の芥川賞受賞作、「コンビニ人間」を読み終えました。
- 作者: 村田沙耶香
- 出版社/メーカー: 文藝春秋
- 発売日: 2016/07/27
- メディア: Kindle版
- この商品を含むブログを見る
既に多くの書評・レビューが書かれておりますし、まだお読みになっていない方にネタばれになってもアレですので、ここでは私の感じたことを少し。
私も、「周りに馴染めない」という感覚は子どもの頃からずっと消えません。
企業勤めをして20年以上になり、結婚して家族を持っていても、その感覚はあまり変わっていません。
ごくごく少数の信頼している方々以外にはひどく無関心で、「あなたは冷たい」と評されることもしばしばです。
本書の主人公の女性が、まわりと関わらないために言い訳を用意してもらったりしていたのに、「彼氏」(?)ができたことで店長らの関心を引いてしまう場面はいろいろと感じました。
職場ではプライベートなことも話した方がコミュニケーションが良くなって仕事も上手くいく、とはよく聞きますが、完璧なマニュアルが存在するコンビニではそれは必要が無い、ということのようです。
ごく短期間でアルバイトが入れ替わるコンビニなら、円滑な人間関係の形成が仕事の潤滑油になるというのは待っていられず、本部が用意したマニュアルに従うしかないのかもしれません。
私の職場は典型的な終身雇用規制業種ですが、補助業務を行う非正規社員は入れ替わりが多く、正社員も定期的に異動があるため、同じ人と働く期間はコンビニよりは長いにしても、何年も続くものではありません。
私個人の感覚ですが、興味もない他者のプライベートも知りたくもありませんし、探られたくもなく。
仕事という機能だけを提供するつもりだし、他社にもそれ以外は求めないのですが。
どうも、そういう感覚はまだまだ少数派のようでして、本書の店長らのようにいろいろと。
他者との距離感をどうとったらいいのかわからない。
そんなことも感じている私には、面白い小説でした。
ぜひ、皆さまもご一読いただければ、と。