マニュアル化と人工知能は、職人芸経理おじさんを駆逐するか?
私が企業会計実務の世界に入ってきた頃、経理の仕事はいわば「職人芸」でした。
その後、西武の有価証券報告書虚偽記載、ライブドア事件など、数々の企業不祥事の度に、法令による規制や証券取引所の自主ルールが整備されていき、経験と勘に頼っていた経理業務も、徐々に社内手続やマニュアルが整備され、「誰でもできる」ようになっていきました。
代表者確認諸制度や内部統制報告書制度もできて、それなりにまじめに取り組んだので、「有効な内部統制」が整うことに。
そのため、日常、定例的に発生するような会計・税務処理から、最終ゴールである短信、計算書類、有価証券報告書作成提出まで、ほぼマニュアル化され、財務会計や税務、制度開示などの細則に精通していなくても、平均的な事務能力を持つ社員なら誰でもこなせるように。
理屈を習得するために、分厚い会計監査六法や法人税基本通達を開くことも必要ありません。
世間では、いずれ企業会計などバックオフィスの管理業務は、すべて人工知能に置き換えられてしまうのだから、もはや人間は不要となるという論調が強いです。
マニュアル方式だと異例的な取引が発生した時に立ち往生してしまう!
あるいは、その取引が異例であること自体に気付かないで、マニュアル通りだけこなしてしまい、後から監査や税務調査で誤りを指摘される!
こんな風に反発する気持ちは、その実務を習得するための昔日の苦労を美化したい職人芸おじさんの抵抗なのかもしれません。
職人芸の経理おじさんは、マニュアル化された「有効な内部統制」で半分、不要になりました。
マニュアル化された中でスタッフが、企業会計原則レベルの知識すら怪しいのに、それなりに日々の実務をこなせてしまう現実と、異例取引に当たって混乱している現実も見つつ。
次に、人工知能が職場に入りこめば、職人芸おじさんを完全に駆逐してしまうのか。
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その未来を確認できる日まで、生きていたいと思っています。