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匿名の金融資産としての現金は廃止できるのか?

本日のお題はこちら。

現金の呪い――紙幣をいつ廃止するか?

現金の呪い――紙幣をいつ廃止するか?

捜査機関や税務当局は、「お金の流れ」に対して目を光らせております。

今日、金融機関の窓口で取引口座を開設しようとすれば、厳格な本人確認を求められます。
そして、本人確認済みの預金口座に出し入れすれば、どこの金融機関の窓口で、何年何月何日何時に、いくら入出金したかが明確に記録されてしまいます。

犯罪による非合法な収益や、ビジネスそのものは合法的なものであっても、売上隠しなどの脱税行為による「お金の流れ」は、当局の目からは隠しておきたいものでしょう。

預金口座を通してしまえば、「お金の流れ」は銀行の電子的な帳簿にすべて記録されます。
当局は、法律で与えられた権限をもって、容易に「お金の流れ」を把握でき、犯罪収益や脱税資金を隠すことは難しくなってしまうわけです。

しかし、「お金の流れ」を隠す最強の手段があります。

現金、それも高額紙幣です。日本では、1万円札ですね。
何かの代金として現金を渡すとき、売り手も買い手も、本人確認は求められません。
完全匿名です。
現金を受渡しても、どこの帳簿にも記録されません。
当局が調べようと思っても、どこにも記録されていないわけです。

麻薬取引をする際、代金を銀行振り込みにする犯罪者はいないでしょう。
麻薬売買は、現金で決済されます。
脱税を図る店主が、客から代金を現金で受け取れば、売上の記録はどこにも残りません。
隠しておいた現金は、腐ることもありませんし、いつまでも保存しておけます。
昨今はずっとデフレ基調ですので、インフレによる目減りも心配ないですね。

本書では、高額紙幣が残ることによる脱税や犯罪取引の様々な弊害を挙げ、「現金の廃止」を提言しております。
ただし、すべての現金を即時に無くしてしまうのではなく、少額の現金(1000円札やコイン)は残し、段階的に電子化していこうというものです。

日本はGDPに対して高額紙幣が出回っている額が大きく、相当程度の地下経済が存在しているものと推測しております。

本書では、もう一つ、「ゼロ金利で元本保証の匿名金融資産」である現金が、中央銀行の金融政策への大きな制約(特にマイナス金利政策の効果を減殺)として機能していることも論じられています*1

ふだんからお財布に入っていて、当たり前に使用している「匿名・ゼロ金利・元本保証」の金融資産としての現金。

その現在と未来について、考えることができる知的刺激に満ちた一冊となっております。

引用とコメントはこちらもご覧ください。
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*1:私個人としては、金融政策への制約としての現金の存在に関心が強いのですが、かなり専門的な分野となりますので、本記事では詳しく書きません。

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