現場を動かす影響システムとしての管理会計について。
本日のお題はこちら。
- 作者: 伊丹敬之,青木康晴
- 出版社/メーカー: 日本経済新聞出版社
- 発売日: 2018/01/31
- メディア: Kindle版
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会計という世界には大きく2つの種類があるといいます。財務会計と管理会計ですね。
財務会計は、企業外部に向けたその企業の財政状態・経営成績の報告するための会計で、
管理会計は、企業の内部の管理者に向け、事業(各部署)の状況等を報告するための会計。
などというふうに説明されます。
いずれも、会計の目的は、企業の外部の者・企業の内部の者が、その会計の仕組みによって情報を得て、意思決定に役立てることともされますね。
さて、本書は管理会計についての本です。
管理会計のテキストといいますと、様々に考案されてきた財務指標の計算方法の説明が数式も交えて詳細に説明されており、意思決定者に適切に情報を伝えてくれる・・というものが多いのではないでしょうか。
そこには、数字で測定される企業内部の人々の顔が見えません。
すべての管理会計システムは上司のための情報システムとともに、影響システムとしての機能を持つ。人は、数字で測定されて評価されると行動を変化させる。きちんと設計されていない管理会計システムは、意図せざる方向に人の行動を変化させてしまう
そう、人間は測定されると、測定結果が自分の人事考課や組織評価に使われずとも、行動を変化させるのです。
標準的な管理会計テキストでは、ある指標を設定すれば、設定者の意図通りに被測定者が動くことが前提となっているのでしょう、そういう側面にはあまり焦点が当たっておりません。
本書では、原価計算、資産管理、予算管理、投資採算管理、研究開発など様々な場面において、影響システムによって人々の行動がどう変化するのか、どのように管理会計システムを設計すべきなのかということが詳細に述べられております。
こう設計すれば絶対OKという解は書かれておりません。
それは各企業のおかれた環境も事業内容もすべて異なるからですね。
現場への理解と試行錯誤で、企業経営を強くすることができる、とされております。
標準的な管理会計テキストの「現実味のなさ」へ違和感を抱いている方も、ぜひお読みください。