会計の数字から何がわかるか?をやさしく解説してくれるお話。
本日のお題はこちら。
やっぱり会計士は見た! 本当に優良な会社を見抜く方法 (文春e-book)
- 作者: 前川修満
- 出版社/メーカー: 文藝春秋
- 発売日: 2018/02/13
- メディア: Kindle版
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「会計士は見た!」に続きまして、一般には馴染みがない財務諸表の読み方をわかりやすく解説してくれる一冊です。
前作は、東芝の不正会計が騒がれている時期でして、キャッシュ・フロー計算書の読み方が中心でした。
今回は、一部の界隈で「大好き」という文脈で語られている喫茶店、銀座ルノアールとドトールコーヒーの比較から始まります。
企業が利益を確保していくために大事な点は二つ。
利益率を高くしていくこと。
回転を早くしていくこと。
この2つです。
ルノアールのコーヒーは1杯590円。
ドトールは220円です。
コーヒーの1杯あたりの原価(材料費)は50円程度と推測されますので、ルノアールは1杯売ると500円以上の粗利(売上総利益)を得られます。
ドトールは150円です。
割合に直しますと、ルノアールは9割弱、ドトールは7割くらいですね。
これだけですと、ルノアールの方が「儲かっている」ようにみえますね。
でも、ルノアールはゆっくり座って寛ぎながら、最低、1時間はいるでしょう。
ドトールは椅子も固いし、長居はしづらいので早々と席を立ってしまう。
ルノアールは、「回転が遅い」わけですね。
粗利と回転率を合わせると、最終的な利益率は、ドトールの方が高めになっております。
通常の会計のテキストでは、粗利×回転率=利益率からなるとい説明は次のようになります。
まずはROE(株主本利益率)が出てきて、これを売上高利益率と総資産回転率に分解して・・というように続きます。
会計に馴染みのない一般の方では、この時点で意味が理解できなくて挫折してしまう。
でも、本書ではROEの分解(デュポン公式*1)がでてくるのはかなり後の方です。
みんながよく知っているルノアールとドトールという実際の企業の財務諸表を使って、会計数字からビジネスの実際が理解できるようになる、という、読者の興味をうまく引き付けて読ませる1冊になっております。
本書、これだけではなく、イオンのスーパー事業の低迷、日本郵政によるM&A失敗、ZOZOTOWNの高収益性、ソフトバンクの活発な投資活動など、昨今の会計に関するトピックを面白く解説してくれております。
前川先生、本書を最後に残念ながらお亡くなりにました。
会計をめぐる話題を興味深く語れる方であっただけに残念です。
ご冥福をお祈りいたします。
こちらも合わせて、ぜひ。