メルカリが納付する法人税に関するお話。
メルカリは企業会計上、赤字ですが、企業所得に課される法人税等を約24億円納付しています。
これは、会計上は費用・損失として処理されたものが、税法上は損金として認められないために「ズレ」が生じていることを示しております。
これはなぜだろう・・とちょっと疑問を呈している方がいたので、調べてみることに。
メルカリの有価証券報告書を眺めてみましたが、子会社を含めた連結財務諸表では内容が把握できません。
そこで、メルカリ親会社だけの単体財務諸表を調べてみました。
メルカリ、ここ2年間で、関係会社株式減損90億、120億計上しています。
子会社の業績不振で、実質価額が低下したために取得原価から簿価を切り下げし、損失として認識しております。
税務上は、親会社の支援がある限り子会社は存続していけるので「確定」した損失ではないと損金として認められにくく、多くの場合、関係会社株式減損は有税(損金として処理しない)ままになっているのが通例です。
税効果会計の注記を見ますと、一時差異の内訳として「関係会社評価損」約70億を計上しています。
現在、日本の実効税率は30%ですから、これで一時差異を割り戻すと210億。
先ほどみた2年間で損失処理した関係会社株式評価損90億+120億は、ぜんぶ有税留保していることがわかります。
日本に久々に登場したユニコーン企業(時価総額1,000億円以上の新興上場企業)として話題となりましメルカリですが、少し不調のようです。
不振となっていた子会社、メルカリ欧州の解散をリリースしております。
海外子会社の解散及び清算並びに特別損失の計上に関するお知らせ
http://pdf.irpocket.com/C4385/xouG/eVb9/fIQg.pdf
当社はこれまで、Mercari Europe Ltd に係る関係会社株式評価損を合計約 13.5 億円認識し、Merpay Ltd に係る関係会社株式評価損を合計約 0.9 億円認識してきました。当該損失は、2019年6月期以降に税務上認容され、当社の連結及び単体の法人税等の金額が軽減される見通しです。
こちらのリリースにありますとおり、英国子会社は清算されますので、清算が完了した時点で約15億の損失が確定し、確定した事業年度の課税所得を15億円減らす効果が起きます。
これに税率をかけた約5億円弱の法人税等の負担が減ることになります。
巨額の関係会社株式損失の多くはメルカリ米国であると推測されます。
有価証券報告書によりますと、メルカリ米国の資本金は24百万米ドルですから、(資本金額と所得原価は直接はリンクしませんが)親会社メルカリの取得原価は250億~300億円くらいでしょうか。
こちらも評価損を計上しているものと考えられますが、有税のままです。
こちらを読みましたところ、苦労話もありましたが、メルカリ創業者たちは夢と希望をもって事業をやっているんだな、と。
- 作者: 奥平和行
- 出版社/メーカー: 日経BP社
- 発売日: 2018/11/22
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創業者たちは、税法上も損失を「確定」させてメルカリ米国の失敗を認めたくはないでしょう。
今後の行方をみていきたいと思います。