楽しく読める会計の役割の歴史的変遷について。
本日のお題はこちら。
会計の世界史 イタリア、イギリス、アメリカ――500年の物語
- 作者: 田中靖浩
- 出版社/メーカー: 日本経済新聞出版社
- 発売日: 2018/10/02
- メディア: Kindle版
- この商品を含むブログを見る
今日まで続く複式簿記を使った会計の歴史は、イタリア都市国家における「取引の記録」から始まるとされています。
本書も、イタリア都市国家の銀行(バンコ)での取引記録から始まります。
オランダ東インド会社ができて複数年にわたって継続する企業(出資者有限責任の株式会社)が登場、いくら出資者に分配できるのか、を計算するために決算と財務報告の仕組みが作られたことに続きます。
ここまでは会計の役割は「忘れないように記録する」というレベルでした。
会計の利用者は、おもに事業を経営する人のためのものといえるでしょう。
続いての章では、蒸気機関の発明と鉄道会社の登場により、多額の固定資産(線路や汽車)を備えた株式会社が成立、固定資産の取得価額を複数年にわたって費用とする減価償却の考え方ができるなど、財務会計の仕組みが複雑化していく様子も。
この頃になると、会計は株式投資のために外部に会社の状況を報告するための役割も果たすようになります。
続いて、デュポン公式に代表されるような管理会計の仕組みができていったことも紹介されます。
過去を記録することだった会計の役割が、コーポレート・ファイナンスの理論の登場により未来を予測するためにも利用されていく様子も述べられております。
会計の本というと、会計理論ばかり並べられて人間の顔が見えない無味乾燥なものになってしまいがちですが、本書では、それぞれの歴史のなかで、その当時の起業家、画家や音楽家の行動が会計の理論からみてどう説明されるのかなども合わせて紹介されおり、楽しく興味をもって読み通せるように工夫されております。
簿記の「借方・貸方」などの会計の専門用語は、入門者にとって理解が困難で「死の谷」とも呼ばれているそうです。
本書では豊富な図解とイラストも載っており、その谷を越えていけるのではないかと。
一度は会計の勉強に挫折した方でも、ぜひ。