優先株出資と銀行融資の間に。
本日のお題はこちら。
地域金融復権のカギ「地方創生ファンド」―共感・感動のスモールビジネスを育て、日本を変える
- 作者: 松本直人
- 出版社/メーカー: 東洋経済新報社
- 発売日: 2019/03/15
- メディア: Kindle版
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投資ファンドといいますと、一般には次のようなイメージでとらえられているのではないでしょうか。
まず、社会の在り方を劇的に変えるような革新的なアイデアを持ちながら、資金が不足している起業家を見つけだし、そのアイデアを事業化するために必要なお金を株式の形で投資。
首尾よく、そのアイデアが事業化されて株式を上場させることで、起業家とともに莫大な上場益を得る・・というものでしょう。
本書で紹介されている「地方創生ファンド」は、そういう「派手なもの」ではありません。
地場で、ちょっとした課題を解決できるようなアイデアを持ちながら、事業実績や担保がないために既存の銀行から融資を受けられない起業家をみつけて、優先株で出資。
事業が軌道に乗れば、その優先株を(プレミアムを乗せて)起業家に買戻してもらうことで投資利益を得る、という割と、地味なものです。
ところで、本書の著者が代表を務める様な投資ファンドは、起業家の必要を満たすような資金を手許には持っていないのが通常です。
ここで、ファンドへ資金を出してくれるのが、預金をバックにした資金を豊富に持つ地域金融機関です。
ここで、疑問がでるでしょう。
融資の審査基準に満たないからお金を出せないはずなのに、なぜ、優先株出資ならできるのか、という。
銀行は企業へ融資を行った場合、一定の利息を支払ってもらい、なおかつ元金も回収していかなければなりません。
これに対し、優先株出資ならば、利息を払う必要はありませんし、元金を返す必要もありません。
起業家が持つアイデアは、確実に事業化できるとは限りません。
銀行融資というものは、最初に決めたとおりに元利金を支払いしなければならないので、不確実な事業のアイデアの実現に必要な資金の調達手段としては、不向きなのです。
本書、金融の専門家でもない読者でも理解できるようにいろいろ理屈を単純化してわかりやすく書いており、このあたりの説明も曖昧です。
一般向け書籍としては、じゅうぶんでしょうが、ちょっと追加してお話いたしました。
さらに詳しく、銀行側がなぜこういう地方創生ファンドへ出資するのか、という点に関しては、また別稿を書こうと思います。