すらすら日記。

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有価証券を「ラッピング」する信託のもろもろの事情について、続き。

昨日の続きになります。


「外債運用にかかる事務処理を外に出すということでは特金もあるのでは、使い分けは?」という旨のご質問をいただきましたので、こちらで回答したいと思います。


特金、昔はファンドトラストなどとも呼ばれておりましたが、銀行の貸借対照表の科目表示としては「金銭の信託」になります。
こちら「金銭の信託」は、昨日解説しました「外債1本だけ投資信託」と同じく、信託の一種ですが、いろいろ取扱い・処理が異なり、ご質問のとおり使い分けされているものと考えられます。


まずは、「金銭の信託」の運用損益は、資金利益には算入されず、段階利益の一種であるコア業務純益には含まれません。
金銭の信託運用益は、「その他の経常収益」の一つであり、経常利益には含まれますが、コア業務純益には含まれません。*1
段階利益のうち、コア業務純益を良く見せたい場合は、昨日の「外債1本だけ投資信託」を利用することになるかと思われます。


次に、金銭の信託は、金融商品会計基準実務指針97項の規定により、原則として運用目的(売買目的有価証券)として処理されることになりますので、期末にその評価損益はPLヒット(損益計算書に計上)となります。*2
「外債1本だけ投資信託」は、金融商品会計基準上は「その他有価証券」となりますので、期末の評価損益はPLに計上されず、純資産直入処理でした。
この違いにより、「金銭の信託」は期末で強制的に損益に反益されてしまうので、売買のタイミングを調整することができないということになります。
狙ったタイミングで益出しをしたい場合・損失を実現したくない場合は、「外債1本だけ投資信託」を選ぶものと考えられます。


税務上ですが、「金銭の信託」は受益者等課税信託として、その信託の財産(有価証券等)を自ら保有しているのと同じく税務処理しなければなりません。
こちらは、信託銀行からレポートが送付されるとはいえ、分配時のみ処理すればよい集団投資信託(外債1本だけ投資信託)に比較すれば、やや事務負担を要することになりますね。


もちろん今日のお話もすべて公開情報で書けます。
個々の銀行の運用意図に関しましてはあくまで推測になりますので、ご了承のほど。

*1:コア業務純益から臨時損益(その他経常収益・費用、金銭の信託見合い費用)を差し引くと経常利益になります。

*2:金銭の信託を満期保有目的・その他目的として処理するための要件はかなり厳格なものになります。詳しくは金融商品会計基準実務指針97項をご参照のほど。

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