すらすら日記。

すらすら☆

銀行の投融資の利益はどの段階に計上されるのか?

銀行業の損益計算書は一般の事業会社のものとは異なり、売上高も営業利益もありません。
さらにわかりにくいことに損益計算書は2種類ありまして、銀行業独特の段階利益指標である「業務純益」というのが出てくるものも!
こちらが計算方法です。

番号 項目 計算式 備考
1 業務粗利益 1=2+3+4
2  資金利益 貸出金・有価証券の利息―預金利
3  役務取引等利益 投信・年金窓販手数料、為替手数料―それらに係る支払手数料
4  その他業務利益
5 経費 人件費・物件費・租税公課
6 業務純益 6=1-5
7 臨時損益 7=8+9+10
8  株式等損益
9  与信費用 不良債権処理額など
10  その他 退職給付費用の数理差異償却など
11 経常利益 11=6-7
12 特別損益 固定資産の処分損益など
13 税引前当期純利益 13=11-12
14 法人税等合計 14=15+16
15  法人税事業税及び住民税
16  法人税等調整額 税効果会計繰り延べ税金資産()
17 当期純利益 17=13-14
銀行は国債、株式を始めとして様々な有価証券や投資ファンドに投資しております。
その利息・配当金や売却損益がどこの科目に計上されるかは、全銀協の勘定科目処理要領などで決められており、市販本の「銀行経理の実務」で公開されています。
銀行経営者も、事業会社と同じく段階利益の上の方を「良く見せたい」というインセンティブがあります。
特に、「銀行本業の利益」とも言われる業務純益はなるべく良く見せたいわけです。

有価証券投資のうち、利息・配当金についてはすべて2番の資金利益に含まれます。
売買損益については、株式とETF(上場株式投信)のみが8番の株式等損益に計上されます。
国債・地方債や社債金融債などの債券の売却損益は、4番のその他業務利益のうちの国債等債券売却損益に含まれます。
非上場の投資信託の解約差益のみは2番の資金利益に含まれます。*1これは、投資信託の解約損益は「金利の調整である」という発想から来ているのではないかと思われます。*2

銀行が投資先を選択する際、段階利益の「より上の方」に計上できる商品を選択したいと思われます。
これは、低金利と競争の激化で貸出金による利息収入が取りにくくなっているため、一気に大きな収益を取れる非上場の投資信託の解約差益は魅力的であるからですね。

銀行経理の実務

銀行経理の実務

すべてこちらに記載されている公開情報です。
この本は経理実務家向けなのですが、銀行に投資商品を売り込みしたい投資会社やアナリストも読んでいると聞きますね。

本日は、こんなところです。

*1:REITなども含みます。信託財産の内容には左右されません。

*2:会計監査人によっては、非上場投信の解約差益を4番の国債等債券売却損益に含まて処理するようにしている場合もあると聞きます。

すらすら日記。は、Amazon.co.jpを宣伝しリンクすることによってサイトが紹介料を獲得できる手段を提供することを目的に設定されたアフィリエイト宣伝プログラムである、Amazonアソシエイト・プログラムの参加者です。