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マイナス金利の銀行会計的なお話。

本日の日本銀行の金融政策決定会合で、民間銀行が日本銀行に預けている当座預金のうち、法定準備+昨年度の平均残高に一定比率を掛けた金額を超える残高に対し、マイナス0.1%の金利を付すことが決定されました。

マイナス金利ということは、お金を預けている方の民間銀行が、お金を預かっている方の日本銀行金利を支払うことになります。

マイナス金利という金融政策の是非やマクロ経済に与える効果につきましては、私は金融政策やマクロ経済学の専門知識はありませんので、控えます。

ここでは、このマイナス金利が銀行の会計処理・決算にどのような影響を与えるのかということに絞りまして、お話したいと思います。

マイナス金利といいましても、マイナスになるのは、民間銀行と日本銀行の間で行われる一定額以上の当座預金金利だけでして、一般の預金者が民間銀行に預けている預金金利がマイナスになるわけではありません。

マイナス金利は来月2月から導入されますが、もし、民間銀行が日本銀行に一定額以上を預け、金利を支払することになっても、それは銀行の経費の一部として「吸収」されてしまい、預金者に転嫁されることは、今のところは考えにくいからです。

また、マイナス金利政策公表に釣られて、債券市場では、7年までの期間の国債利回りがマイナスになりました。
これは、低金利で運用難に陥っている銀行の有価証券運用が、ますます難しくなり、稼げなくなることを意味しています。*1


決定会合の結果公表を受け、本日の株式市場ではメガバンク・地銀など銀行業の株価が軒並み下落しました。

銀行は株式会社ですから、株主が所有しているわけです。

銀行がマイナス金利を負担したり、債券運用で稼げなくなったりするということになれば、それは最終的に株主の負担です。

しかし、銀行経営者は、株主から一定水準での収益を上げることを期待されています。

そうなると、マイナス金利や債券運用の困難さによる負担を株主までは帰着させず、従業員の給与水準を切り下げしたり、システム投資を抑制したりして経費を切り下げて、株主の期待に応えようとするでしょう。

あるいは、リスクの高さの割に金利を稼げない貸出金を抑制したり、逆に、債券運用難をカバーしようとして、金利が稼げそうなハイリスクな貸出を試みたりするかもしれません。

先ほど申しました通り、このマイナス金利政策によって、いきなり一般の預金者の預金金利がマイナスになることは考えにくいです。

でも、このマイナス金利という前例のない決定と市場の変化を受け、銀行経営者は合理的な判断として、政策決定者が想定する/想定を超える行為を行うはずです。

その帰結として、何が起こるのか。

結末を見届けるまで、生き残りたいと思っております。




債券のマイナス利回りが何を意味しているのかについて、1年前に書きました、こちらも合せてご覧ください。
sura-taro.hatenablog.com

追記:
マイナス金利についてまとめられた本はあまり見当たらないのですが、本書は市場関係者が欧州でのマイナス金利の経験をもとにその実態を書いたものです。
表紙にはハイパーインフレとか国債暴落うんぬんという煽りがありますが、これは編集部が販売のために記載したもので、中身はトンデモではないと思われます(まださわりしか読んでおりません)。

*1:既に保有している債券は金利低下に伴い価格が上昇し、含み益を持つこととなりますが、これも途中で売却したり、満期償還されたりしてしまえば、新規投資先として選択できるのは、ゼロかそれ以下の金利しかつかない債券しか無いということになり、運用は困難となります。

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