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銀行が日本国債を担保に入れてドル資金調達する仕訳について。

こんな記事が出ていましたので、少々会計のお話を。
www.nikkei.com

会員限定記事ですので、かいつまんで要約しますと、銀行が外貨を調達するために一定額の日本国債を保有し続けなければならないので、売るに売れない・・というお話ですね。

これを市販本である「銀行経理の実務」を使って仕訳で説明してみます。

銀行が一般顧客から広く「預金」でお金を集める際、顧客から預金を預ける条件として担保を要求されたりしませんよね。

たとえ10億円などの大口預金者であっても、顧客は無担保で預金を預け入れします。
銀行を信用しているからこそです。

でも、銀行は預金以外でも様々な資金調達を行っておりまして、特に外国銀行からドルを調達する際は無担保だけでは借入することができません。

マイナス金利以前から、国内での円運用では利鞘が取れないので、邦銀も外貨運用にシフトしているとも報じられておりましたが、ドルで運用するためにはドルを調達しなければなりません。

円で調達してドルで運用するのでは為替リスクを抱えることになりますからね。

さて、ドルをマーケットで外国銀行から調達するために、日本国債を担保として差入れすると、邦銀の仕訳はこうなります。

取引① 日本国債1,200円を担保として差入れし、10ドルを調達する(1ドル100円)

(借方)現金1,000/(貸方)債券貸借取引受入担保金 1,000

注記事項 担保差入有価証券 1,200

取引② 調達した米ドルで米国国債1,000を購入する

(借方)有価証券 1,000/(貸方)現金 1,000

ドル、とありますが、邦銀のバランスシートでは円でしか記帳できませんので、調達時のドル円レートで換算して帳簿に載せることになります。

③決算(為替換算)

資産側も負債側も同じレート・同額でドル資産・ドル負債がありますから、円安に振れても円高に振れても為替換算による損益は相殺されてしまい、損益計算書にはヒットしません。*1
これを為替がスクエアである、と言いますね。

取引④ 米国債が利息2ドルと共に償還される(1ドル=90円)

(借方)現金 1,080/(貸方)有価証券 1,000
(借方)外国為替売買損100/(貸方)有価証券利息 180*2

取引⑤ 調達した米ドルを外国銀行へ利息1ドルと共に返済する(1ドル=90円)

(借方)債券貸借取引受入担保金 1,000/現金 990
(借方)債券貸借取引受入担保利息  90/外国為替売買益 100

④と⑤を通算しますと、外国為替売買損益は相殺されてゼロになりますね。
担保差入れしていた日本国債は返却され、注記から削除されます。

そして米国債を運用した利息180と、担保差入れして調達した支払い利息90の差額が邦銀の利益となります。

この運用差益が、日本国内の円建てのものよりも高ければ外に貨運用の妙味があるというわけです。


なお、外国銀行だって無制限にドルを持っているわけではありません。
多くの邦銀がドル運用を行おうとすれば調達金利が高くなりますし、信用力のない邦銀ですと、有担保とはいえやはり調達金利が高くなりますね。


非常に単純化して説明していますので、厳密に言うといろいろ違うのですが、この辺りでご容赦を。


詳しい仕訳の説明はこちらに記載されております。

銀行経理の実務(第9版)

銀行経理の実務(第9版)


*1:銀行では年1回ではなく、月次で為替換算を行っておりますので、実際の仕訳は異なります。

*2:実際には損益科目は期中平均レートで換算されて記帳されます。返済の利息も同じ。

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