地銀も前向きな姿勢だけでは食っていけない、というお話。
本日のお題はこちら。
ドキュメント 金融庁vs.地銀?生き残る銀行はどこか? (光文社新書)
- 作者: 読売新聞東京本社経済部
- 出版社/メーカー: 光文社
- 発売日: 2017/05/26
- メディア: Kindle版
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金融、それも銀行業界は産業の脇役であるはずなのですが、どうも世間の耳目を集めるようです。
メガバンクの再編はもう落ち着き、ある意味、安定しておりますので、昨今は地方銀行について話題になっておりますね。
本書は、ベストセラーとなっている「捨てられる銀行」(1、2巻)がある意味、森金融庁長官の意向を表に立てているのとは異なり、事実を丹念に取材して昨今の銀行業界の事情を紹介しております。
タイトルの地方銀行だけでは無く、三井住友トラストのガバナンスについても触れております。
さらに、森長官の強過ぎるリーダーシップゆえに、金融庁の組織としての政策の継続性について疑問があるのではないか、ということも示唆しております。
新聞やwebの報道を丁寧に追っている方であれば、それほど目新しい事実についての知見は得られません。
ここでは、一つだけ私のコメントを。
本書や「捨てられる銀行」で紹介されているような、地銀による農業分野向けの動産担保融資とか温泉街再生などについてです。
これらの取り組みは、従来からの不動産担保や代表者の連帯保証などに依存しない、「望ましい金融のあり方」ということで、森長官も覚えもめでたいことになるかと。
しかし、新しい収益源とするためには、これらはあまりにボリュームが小さく、手間がかかる割には得られる利益は僅かなものでしかありません。
金融庁向けだけではなく、マスコミ受けもいいのですが、これでは「食えない」というのが現実です。
地銀といえども、公共性だけでは食っていけません。
預金者に利子を、従業員には給与を支払い、システム経費など様々な費用を賄い、税を納付した後に株主へ期待される配当金を出していかなければ、存続できないのは他の営利企業となんら変わりません。
前向きなポーズだけで生きていけるなら、これほど楽なことはないわけです。
では、どうしたらいいのか、というのは、金融庁に言われずとも考えております。
その選択が正しいかどうかは、森長官ではなく、将来の市場に判断を委ねたく思います。