銀行持株会社の税務戦略を考えるお話。
子銀行を下にぶら下げた金融純粋持株会社の収益は、自ら事業を行わないわけですから、基本的に子銀行からの配当金しかありません。*1
法人税法の規定で、100%連結子会社*2からの配当は持株会社では益金不算入になります。
益金不算入とは、いわゆる非課税のことですね。
持株会社でも、子銀行へ借入金利息を払ったり、持株会社固有の人件費などの経費がかかり、これは法人税法上でもしっかり費用(損金)になってしまいます。
そうなると、持株会社は会計上は黒字になったとしても、税務上は単年度でも赤字(欠損)になってしまうケースが多いのではないかと思われます。
持株会社方式であっても、連結納税制度を採用しない限りは、持株会社・子銀行はそれぞれ別々の法人格ですから、それぞれ単体で税務申告を行わなければなりません。
繰越欠損金は、現在の税制では10年まで繰越できますが、欠損が累積していっても単年度赤字のままではいっこうに埋まらないため、いずれ繰越年数が切れて切り捨てられてしまうことに。*3
一方、子銀行では課税所得が発生しますから、国への納税は単年度毎に当たり前に発生してしまいます。
これを防ぐためには、持株会社を連結納税親法人として、子銀行の黒字と課税所得の赤字黒字損益通算を行い、子銀行から国へ納税するのではなく、課税所得に対する法人税を親法人へ受け渡すことにより、連結グループ内から資金流出を防止する方策も考えられますね。
今まで金融持株会社はメガバンクが多く、しかも持株会社にぶら下がっているのは配当金が100%非課税になる100%子会社だけでは無かったため、この欠損金の期限切れ問題はあまり顕在化しなかったのではないかと思われます。
しかし、近年、続々と設立されている地域銀行の金融持株会社は、親法人の下にぶら下がっているのが100%子銀行1~3行程度だけというのが多く、さっそく税務上の問題が出てくるのではないかと推測しております。
なお、足利銀行は現在でも持株会社を親法人として連結納税制度を採用しており、統合後は常陽銀行と共に持株会社にぶら下がることになるため、繰越欠損の期限切れ問題は生じないものと思われます。
非常にテクニカルな問題になりますが、適切な税務プランニングにより余計な納税を防ぐことも、経営の巧拙を決める基準になるのではないかと。
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