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巨大企業も税金を払っています。

全力2階建てにもまとめられましたが、もう一度例のトンデモ本に対する批判を。
こちらですね。

税金を払わない巨大企業 (文春新書)

税金を払わない巨大企業 (文春新書)

著者(富岡幸雄中央大学名誉教授)は、中央大学で長らく税務会計を講じていた高名な学者ですが・・


著者のロジックは、持株会社形式を取っている大企業のいちばん上に位置している持株会社単体の損益計算書に計上されている「法人税等」だけを取り出し、「会計上の税前利益に対し0.1%以下で少ない!けしからん!」という粗雑なものです。
持株会社の収益の大部分は傘下にぶら下がっている子会社からの配当金であり、法人税上、子会社からの配当は本支店間の損益の振替と同じく税金がかからない(益金不算入)なので、持株会社の課税所得は見掛け上の会計上の利益よりも著しく小さくなります。
これは、大企業だけの特典ではなく、中小企業も同じ制度が適用されます。


しかし、持株会社にぶら下がっている子会社は当たり前に税金を納付していますので、連結グループでは当たり前に納税を行っているわけです。
本に取り上げられているみずほFGを例にとりますと、持株会社単体の納税額2億26百万円。しかし、連結全体では645億円の税金を納付しています。
税前利益に対する割合は、単体0.1%、連結9%と法定実効税率約38%に比較すると著しく小さいように見えますが、これは過去の不良債権処理などでできた繰越欠損金などの影響も有り、会計上の利益と税務上の課税所得にずれがあるためです。しかし、このずれの分は過去に会計上の損失を出していた時に税務上は損金にならず税金を納付していたり、あるいは将来に繰越欠損金が埋まれば納付されることになります。
企業が存続する全期間を通算してみれば、繰越欠損金による税負担の減少は均されてしまい、ずれは基本的には生じないわけです。


富岡氏は税務会計の専門家ですから、このような法人税の仕組みには精通しているはずで、過去においては受取配当金の益金不算入や繰越欠損金の問題点にも言及しています。
齢90になろうかという最晩年に、なぜこのようなデタラメ本を執筆したのでしょうか。
富岡氏の学術業績を知るものとしては実に残念です。。

全力2階建てのまとめ記事はこちら。結構なトンデモ本なのに売れてます、富岡幸雄中央大学名誉教授の「税金を払わない巨大企業」 : 市況かぶ全力2階建

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