誰でもできる「自動化された経理」が理想だけど・・
営業一筋の方々などから、時々以下のような批判を受けることがあります。
経理は1円の利益も生まない。経理担当者なんてのはただ数字を並べる単純作業をしているだけだ。
それに比べ、営業はどうやれば売り込みができるのか、自社の戦力や商品の強み弱みを把握したうえで、交渉相手やライバルも緻密に分析し、様々な駆け引きを行って人間の全力を投じなければできない高度な仕事だ、ということでしょう。
さて、「経理が単純作業」という問題の立て方の前提として、決算や税務申告に必要な数字が自動的に経理担当者の手元に流れてきて、それをあらかじめ決められた方法で並べればいいんだから、人間はいらないんじゃないかということを置いているのではないかと思われます。
しかし、実際は・・
数字を作っているのは他ならぬ営業の方々や、管理部門でも他の部署の方々であります。
そして、経理の手元には数字は自動的には流れてはきません。
そして、間に入る生身の人間たちは、それぞれいろいろな思いを持っています。
「営業成績を良く見せたい」
「あと1本契約を取ればボーナスの査定が上がるはず」
「(知識がないので)何を経理に渡したらいいのかわからない」
「発注忘れを上に知られると怒られる(隠したい)」
などなど。
経理は、生身の人間たちのこの思いを見抜いたうえで、数字が流れてくる仕組を構築し「正しい数字」を把握しなければなりません。
これは、様々な「歪められた数字」を出そうとしてくる様々なバイアスを持った人間との交渉が前提となります。
さらに、集められた数字を並べる方法(ルール)はざっくりとしか決まっておらず、将来の収益や貸倒の見込みなど、多くの見積り要素を加味したうえで処理しなければならないのです。
いわば、人間の全力を投じなければならないわけです。
できましたら、最初の批判の前提となるような「自動化された経理」に近づいて行くのが理想であります。
そうすれば、生身の経理担当者の労苦も、少しは軽減できることでしょう。