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すらすらわかる朝日新聞の決算と今後のゆくえ。(速報版)

朝日新聞の2018年3月期決算短信が公表されました。

朝日新聞は上場企業ではありませんから、関連会社である上場企業、テレビ朝日HDが「親会社等の決算に関するお知らせ」という形での開示となります。

http://www.tv-asahihd.co.jp/contents/press/2018/asahishinbun3003.pdf
こちらです。

朝日新聞、売上は3,839億円、3%弱の減少。でも最終利益は120億円と35%増益になっています。
ここでは、本業の収益力を示す営業利益に着目してみます。
営業利益は、78億円(+12%)の増益です。

営業利益の増加は、本業の効率化により達成されたものでありません。
朝日新聞、2017年7月に退職給付制度を改定しており、これにより退職給付債務が355億円、減少しております。
退職給付債務の減少ということは、会社からみて負債の減少、従業員からみると退職金の切り下げです。
EDINETで開示されている朝日新聞の半期報告書から引用します。

(追加情報)
当社は、平成29年7月11日に退職金規定の改訂を行った。
これに伴い、退職給付債務が35,532百万円減少する。この退職給付債務の減少は過去勤務費用に該当するため、当社の定める会計方針に従い、5年間にわたり定額法により費用の減額として計上する。

朝日新聞の会計方針では、過去勤務費用は、発生した年度から5年で償却されます。
負債減少ですので、会計上は販間費に含まれる人件費の減少。
7月からの制度改正ですので2018年3月期には、355÷5×9÷12でざっくり50億円の人件費減少として計上されていると推計されます。

さて、2018年の営業利益は78億円でした。このうち、50億円が制度改定による人件費減少効果ですね。
本業では、ほとんど営業利益が出せていないということが読み取れます。

次に、セグメント分析を行ってみます。
朝日新聞、所有する都内の一等地からの安定した賃貸収入が出ており、新聞などのメディアセグメントに次いで売上げが大きいのが不動産セグメントですね。
開示された短信ではセグメント情報は載っていません。
昨年度、2017年3月期の有価証券報告書では、営業利益70億円のセグメント別内訳として、メディア16億円、不動産49億円、その他5億円と開示されています。

今般の退職給付制度改定では、従業員の割合に応じて営業利益の改善効果があるものと考えられます。
セグメント人員は、メディアセグメントが8割、不動産、その他が10%づつです。
先ほど書きました、50億の営業利益改善効果は、8割40億円がメディアセグメントへ帰属することに。
一方、不動産セグメントは大きな不動産の異動は無いようですので、昨年度同レベルの営業利益を確保できているものと推測されます。
これらから、まだ開示されていない2018年度のセグメント別営業利益を推計してみました。

2017年3月期 2018年3月期
メディア 16 15
不動産 49 54
その他 5 9
営業利益計 70 78

2018年3月期は推測です(金額は億円)。メディア事業は、退職金切り下げによる40億円費用削減効果があっても営業利益は横ばい。制度改定効果を控除すると、25億円程度の赤字ではないかと推測されます。
いよいよ、新聞業では利益が確保できなくなっているようですね。


では、次に朝日新聞はこのままズルズルと部数を減らして経営が成り立たなくなるのか・・ということです。
それは、朝日新聞の経営破綻は、次の理由により考えにくいです。

不動産賃貸業で約50億円の営業利益を安定して確保できていること。
持分法関連会社からの利益が約60億円もあること(うちテレビ朝日が40億円)
過去の利益剰余金、いわゆる内部留保が約3200億円もあること。
有価証券の含み益が1400億円もあること(いずれも2018年3月期)。
まだまだ退職金切り下げなど従業員の処遇を下げる余地があること。

というところでしょうか。

こちらは公開されている財務報告から一定の仮定を置いて推測したものです。
いっさいの投資判断の助言を行うものではなく、推測の正確性は保証できません。

答え合わせは、6月末の有価証券報告書開示を待ちたいと思います。


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