すらすら日記。

すらすら☆

正直さは、ある日から急に始められるのか。

ある日突然、組織のルールが変わります。

今までは期末になれば押し込み販売などのその場しのぎの対策や、挙句の果てに伝票操作循環取引までやってで売上を立てていたのに。

ある日、不正が明るみに出て経営TOPは追放。

でも、大部分の中間管理職は今まで通り。

言うことだけが変わります。

「これからは、嘘はいけない。」

こんな組織で、その日から変われるでしょうか。

今までは、上手い嘘をつく者、見栄えの良い「取引」を作り上げる者が評価されてきたのに。

率先して嘘と誤魔化しを先導してきた中間管理職は依然としてその位置に座っている。

変わったなんて、信じられるでしょうか。

人間、そんなに簡単に行動規範を変えられるものではありません。

何年経ったら、嘘と隠蔽が褒めらした組織で、正直さが美徳として承認されるようになるのか。

案外簡単に切り替えられる場合と、10年経っても前の行動様式が染みついていて、何も変わっていない場合と。



あなたの場合は、あなたの組織の場合は、どうでしょうか。


「自分がいなくても回る仕組み」の前提条件のお話。

管理職あるいはその業務の中核を担うベテランの大事な仕事は、「自分がいなくても仕事がきちんと回っていく仕組み作りだ」というのはよく聞く話です。

ある分野の仕事が、ある特定の人しかできない・属人的な経験と勘で処理されていてブラックボックス化しているというを避けるためですね。

属人化・ブラックボックス化は不正の温床ですし、たとえ、その特定の人が「善意の人」であったとしても急な病気休暇、あるいは定年退職でいなくなってしまったときに業務の継続すら危ぶまれることになりますから。

なので、情報の共有化・マニュアル化などをコツコツ積み重ねて、「自分がいなくても回る仕組み」を作っているつもり・・だったのですが。

後任者が前と同じような意識で「仕組みの更新」をしていかないと、だんだん法令改正や業務の変化でズレができ、細かい保守管理を継続しないとどんどん合わなくなってしまいます。

「自分がいなくても回る仕組み」というのは、後任が同じくらいの意識をもってその仕組みを「修繕」し続けない限り、あっという間に崩れてしまうものじゃないか、と。

仕組みづくり、だけでは半分で、人づくりもしなきゃいけなかったのかな、とも感じつつ。

「仕組みづくり・人づくりという仕事」そのものが、属人化・ブラックボックス化しているのが原因なのだろうかということに思い当たり、道の遠さに嘆息しております。


現場を動かす影響システムとしての管理会計について。

本日のお題はこちら。

会計という世界には大きく2つの種類があるといいます。財務会計管理会計ですね。

財務会計は、企業外部に向けたその企業の財政状態・経営成績の報告するための会計で、

管理会計は、企業の内部の管理者に向け、事業(各部署)の状況等を報告するための会計。

などというふうに説明されます。

いずれも、会計の目的は、企業の外部の者・企業の内部の者が、その会計の仕組みによって情報を得て、意思決定に役立てることともされますね。

さて、本書は管理会計についての本です。

管理会計のテキストといいますと、様々に考案されてきた財務指標の計算方法の説明が数式も交えて詳細に説明されており、意思決定者に適切に情報を伝えてくれる・・というものが多いのではないでしょうか。

そこには、数字で測定される企業内部の人々の顔が見えません。

すべての管理会計システムは上司のための情報システムとともに、影響システムとしての機能を持つ。人は、数字で測定されて評価されると行動を変化させる。きちんと設計されていない管理会計システムは、意図せざる方向に人の行動を変化させてしまう

そう、人間は測定されると、測定結果が自分の人事考課や組織評価に使われずとも、行動を変化させるのです。
標準的な管理会計テキストでは、ある指標を設定すれば、設定者の意図通りに被測定者が動くことが前提となっているのでしょう、そういう側面にはあまり焦点が当たっておりません。

本書では、原価計算、資産管理、予算管理、投資採算管理、研究開発など様々な場面において、影響システムによって人々の行動がどう変化するのか、どのように管理会計システムを設計すべきなのかということが詳細に述べられております。

こう設計すれば絶対OKという解は書かれておりません。

それは各企業のおかれた環境も事業内容もすべて異なるからですね。

現場への理解と試行錯誤で、企業経営を強くすることができる、とされております。

標準的な管理会計テキストの「現実味のなさ」へ違和感を抱いている方も、ぜひお読みください。


好きな作品を応援する「作法」について。

webには無料の情報があふれています。

電子でつくられたものは簡単にコピーできますから、作者に無断でオリジナルをコピーし勝手にupしているものも。
コミックやアニメの分野では、そういう違法アップロードが大量に出回っていて問題になっていると聞きます。

読み手の方も、あまり違法だという意識もなく、なかにはSNSで作者本人に直接「アップロードされているの読みました!」とかやっちゃう人もいるらしいですね。

さて、私の娘たちも好きなコミックやアニメがあって、自分でも欲しいという話をしてくることがあります。
「パパ、ネットで探して~」って。

そんなときは、ブックオフとかで中古を安く買うのではなくて。

「気に入った作品があったら、コミックでもグッズでも新品で正規のルートで買いなさい。それでお金が作者のもとに行って、続きが期待できるようになる」

そんなふうに教えています。

「違法アップロードはダメだ」と頭ごなしに押し付けても、無料情報に慣れた世代にストレートに理解するのは難しいでしょう。


どうすれば、好きな作品を応援できるのか。

どうすれば、作品の作り手にお金を届けられるのか。

どうすれば、続きを描いてもらえるのか。



回り道でも、理解してもらえればいいな、と思っております。


「好きなことで生きていく」を支える人々について。

社会は、どんどん変化しているようです。

人口減少による日本の国力の衰退とか、AIによって仕事がなくなるとか。

「今までのままでは無理だ」、というのは誰しも感じているようです。

そのため、何か新しいこと始めようと呼びかける方々も目立っております。

会社に頼ることはない、スマートフォンでなんでもできる、好きなことで生きていけばいい、と。

私もそういう言説を書いた本を読んだりしました。

なるほど、書いてあることはもっともです。

しかし、何やら違和感も。

新しく変化しよう、と呼びかける人々は、今の社会に当たり前に存在している安定した電力の供給、蛇口をひねれば清潔な水がでる、スマートフォンの通信の確保、定刻通り運行される交通機関

変わろう、と呼びかけている場合でも、これらの基礎的な社会インフラの維持・整備は、「好きなことで生きていく」人とは別に、何も変化せずに安定して確保されていることが前提になっている。

その前提、明確に書かれていなくても、顔が見えない「誰か」がきちんと無言でやってくれている。

変わる人は、それに乗ればいいだけだ。

そういう暗黙の了解があるような気もしました。

いえ、社会インフラといえども、変わっていくはずなのに。

何か、他者と環境は固定されていて、自分だけが上手く波に乗っていけるのだ。

そんなに都合の良い話があるのでしょうか。

変わるのは、支えている人々も含めて変わっていくのではないでしょうか。


そんなことも、考えております。


通貨発行の簿記会計的なお話。

皆さんが持っている1万円札。製造原価はおよそ20円です。

なので、日本銀行は1万円札を刷るたびに、1万円と20円の差額、9980円を「通貨発行益」として得られる・・というお話を聞いたことがあるのではないかと思います。

仕訳を考えてみました。

日本銀行の1万円札発行仕訳
(借方)日本銀行券 10,000 (貸方)銀行券製造費 20

(貸方)通貨発行益   9,980

この仕訳では、日本銀行券は借方に来ています。資産の増加、という意味ですね。
日本銀行以外の個人や企業にとって、お金は資産=財産そのものです。何も間違っていないのでは・・と思われるかもしれません。

しかし、こちらに掲示されている日本銀行のバランスシートをみますと、日本銀行券は日銀の資産ではなく「負債」です。約100兆円、負債の部に計上されていますね*1
平成29年3月期 日本銀行決算(PDF)
http://www.boj.or.jp/about/account/data/zai1705a.pdf

この仕訳は誤りです。

こちらを読んでいたところ、この記述にも当たりました。

銀行券の額面と製造費の差額が通貨発行益になるという俗説は誤りです。例えば、日本銀行は1万円札を20円で仕入れて1万円で発行しているため、9980円を儲けているという説明は完全に誤りです

では、どういう仕訳になるのか。考えてみました。

貨幣発行を簿記会計的にお話いたしますと次のようになります。
仕訳は、すべて日本銀行の帳簿上で行われているものです*2

日本銀行は、銀行券製造費を計上して国立印刷局へ1万円札を発注する。

(借方)銀行券製造費 20(貸方)現金 20

銀行券製造費は、年間で518億円計上されています。
この時点では、日本銀行券はオフバランスであると推測されます。

②民間銀行は、預金者からの支払い要求に備えて、日本銀行に預けてある当座預金から、日本銀行券100億円を引き出す。

(借方)当座預金 100億(貸方)発行銀行券 100億円

この時点で、オフバランスであった1万円札が日本銀行のバランスシートの負債に計上されます。
当座預金も、日本銀行の負債に計上されています。
鏡として、民間銀行の資産にもなっています。
日本銀行から、お金(=日本銀行券)を引き出しできるのは、日本銀行当座預金保有している民間銀行のみですね。

なので、国立印刷局から受け取りした1万円札は、民間銀行から日本銀行への払い出し請求が唯一の流通ルートなるわけです*3

これが通貨発行の仕訳です。

では、通貨発行益とは・・こちらにあっさりと書かれています。
日本銀行の利益はどのように発生しますか? 通貨発行益とは何ですか? : 日本銀行 Bank of Japan

日本銀行の利益の大部分は、銀行券(日本銀行にとっては無利子の負債)の発行と引き換えに保有する有利子の資産(国債、貸出金等)から発生する利息収入で、こうした利益は、通貨発行益と呼ばれます。

ちょっと繋がりません。
こちらを繋げますと、②の仕訳で民間銀行から預かっている当座預金が借方に来ました。
次に、この仕訳が起きます。

日本銀行は、民間銀行が保有する国債100億を買いオペにより買い入れ、代金を民間銀行の当座預金へ振り込んだ。

(借方)国債 100億 (貸方)当座預金 100億

はい、②と③の仕訳を繋げると、当座預金は同額100億円が借方貸方で増減が消えてしまいます。
結果、この仕訳が残ります。

(借方)国債 100億 (貸方)発行銀行券 100億

これで、「お金を刷ることで、利息を生む資産=財産である国債を入手」できたことになります。
1万円札は、持っている人に利息を払う必要はありません。

ゼロ(20円の原価)で、毎年、利息を生む国債を入手できたわけです。

通貨発行益とは、国債などの資産から得られる収入から、1万円札の製造費用も含めた経費、日本銀行職員に支払われる給与、民間銀行へ支払う当座預金の一部に付される利息などの費用を差し引いて残ったものになるもの、ということになります*4

以上、簿記会計がわかると、もっともらしい話が実は誤りで、こんなふうに日本銀行の中で切られている仕訳も推測できるようになりますというお話でした。


*1:さらに、費用であり借方にくるはずの銀行券製造費が、貸方にきている時点でも仕訳がおかしいことがわかります。

*2:本記事は、公開されている日本銀行の財務諸表などの資料をもとに筆者が推測して記述したものです。いっさいの非公開の内部情報を含みません。

*3:金融政策の一手段として、ヘリコプターに乗って空から1万円札をばら撒けばいい=ヘリコプターマネーという言葉のイメージがありますね。そのイメージとは異なり、日本銀行は民間の個人や企業に直接、1万円札をバラまく手段を持っていません。

*4:国債は非常に低利になっていますが、民間銀行へ支払う利息よりもまだまだ高い利回りになっています。

コーポレートファイナンスのおすすめ入門書について。

ファイナンスの本というと何の説明もなしに見慣れない記号を使った数式がドーンと出てきて、理屈もわからず覚えさせられるか、そもそも数式が解けなくて挫折・・ということが多いのではないかと思います。

あるいは、数式は読めたものの、現実離れした仮定が置かれていてこんなの納得できなし実務にも使えない・・とか。
特に米国流の株主資本主義?や直接金融が前提があるので、こんなの日本の実情に合わない・・となってしまうかもしれません。

今日は私がいろいろ読んだなかから、挫折しないコーポレートファイナンス入門書としておすすめできるのをいくつか。

企業価値の神秘

企業価値の神秘

宮川先生の「企業価値の神秘」です。

とかく数式を示すだけで理由の説明が少ないテキストが多いなか、割引現在価値の考えから、WACC加重平均資本コスト、CAPMの意味と計算過程を「なぜそうなるのか」というコーポレートファイナンスの思考回路を自分のなかに作れるように丁寧に順を追って説明してくれます。
抜群の面白さです。
「現実感がない」というファイナンス理論への批判に対しても、現実の市場の不完全性によってどのように理論が修正されていくのか、きちんと「理論への批判には理論で」答えております*1
アマゾンがいつも品薄なので、楽天リンクも貼っておきます。
企業価値の神秘 コーポレートファイナンス理論の思考回路 [ 宮川 壽夫 ]

コーポレートファイナンス実践講座

コーポレートファイナンス実践講座

米国のテキストを翻訳したものでは日本の実情に合わない・・という声に対してはこちらを。
銀行融資がメインで、社債や株式による調達は少ない中堅規模の企業にぴったりだと思われます。法制度や会計にも目配りしていて、実務でわからないことがあったときに辞典のようにして使えるかと思います。
巻末にファイナンスで参考になるノンフィクションや小説、映画も紹介されています。
こちらも面白いです。

道具としてのファイナンス

道具としてのファイナンス

2005年出版なので少々古めですが、エクセルの入力方法まで丁寧に解説してくれるテキスト。まさに、道具としてファイナンスの理屈を実務で使える知識として身につけたい方に。
あくまで入門レベルですが、別売りの練習問題まで含めれば実務ではこれでじゅうぶんではないでしょうか。

コーポレート・ファイナンス 第10版 上

コーポレート・ファイナンス 第10版 上

  • 作者: リチャード・A・ブリーリー,スチュワート・C・マイヤーズ,フランクリン・アレン,藤井眞理子,國枝繁樹
  • 出版社/メーカー: 日経BP
  • 発売日: 2014/06/20
  • メディア: 単行本
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最後は米国の分厚い教科書を。
最初に紹介した宮川先生のゼミでも採用されている定番テキストです。
各巻800頁で上下巻で1600ページもありますが、数式の意味、展開から丁寧にくどいくらいに説明されております。
章末には簡単な練習問題もついていて、エクセルの入力方法も含めて学習できます。

私はまだ途中ですが、宮川先生の「企業価値の神秘」で分厚い教科書にも挑戦してほしいと紹介されていたので読み進めております。

入門編はこんなところで。
また学習が進んだら、次をご紹介します。


*1:エージェンシー理論、取引費用理論、所有権理論など。

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