お金をもらうと儲かるのか?
昨日今日とこんな報道を目にしました。
東電株が急落、最低1兆円の公的資金注入で調整との報道(ロイター)
前者については震災復興のために望ましいという意見が聞こえる一方、後者については「国民の税金をもらって救済とはけしからん!つぶしてしまえ!」などという批判がさっそく聞こえております。
東電のスキームについては詳細不明ですが、金融機関の公的資金スキームについて解説してみましょう。
全て公開されている情報ですが、法律(金融機能強化法)、金融庁や預金保険機構、受入金融機関のHPなどに分散しており、その全体像を把握するのは容易ではないかと。以下、解説いたします。
まず、公的資金は税金ではありません。
公的資金は金融機関が優先株を発行し、それを整理回収機構が引き受けるという形で投入されます。*1
整理回収機構は、預金保険機構の100%子会社です。
預金保険機構は特別な法律に基づく法人であり、その資本金の95%ほどは政府で、残りを日本銀行と民間金融機関が保有しています。
預金保険機構は債券(預金保険機構債)を発行し、資金を市場調達します。この預金保険機構債には政府保証がついており、償還できない場合は政府が肩代わりすることになります。
この政府保証があるがゆえに、公的資金と呼ばれるのです。
預金保険機構は子会社である整理回収機構に貸出を行い、その資金をもとに民間金融機関が発行する優先株を引受する流れになります。
よく誤解されるのですが、金融機能強化法による優先株引受は、民間銀行に対する贈与ではありません。優先株は資本金(資本準備金)に計上され、毎年所定の配当金を支払わなければなりません。*2
また、償還期限が定められており、15年後には返済しなければならないのです。*3
この説明でわかるとおり、これは事実上、借入金(負債)であります。
業績不振となり、配当を支払えなくなると普通株に転換され、政府の議決権が発生します。ここで(議決権割合にもよりますが)事実上の国有化となります。
さらに、公的資金を受けている間は国(金融庁)に対し詳細な報告をあげなければなりません。
ローンを借りて、「現金を手にできて儲かった!」と思うのは金銭感覚の破綻した方のみでしょう。
金融機関も公的資金を入れると貸出目標などで金融庁からプレッシャーを受けることになるので、ちっとも嬉しくないと思います。
現金をもらっても、返さなきゃならないのでは儲かったことにはなりません。タイトルはこちらを参照しました。
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日々ニュースを見る時、会計のセンスがあるとちょっと世の中が違って見えますよ。