コーポレートガバナンスも一過性のブームに終わる?
コーポレート・ガバナンスに関する書籍がたくさん出版され、ちょっとしたブームになっているようです。
一時期のJ-SOX(内部統制)や、IFRSで業界が騒ぎになったことを思い出します。
J-SOXもIFRSのブームの時だけは全社的に取り組んでそれなりの成果、J-SOXはそれなりの統制の仕組みができて、IFRSは日本基準とのギャップ分析を通じて自社の会計処理の態勢の見直しを行うことができました。
ブームが過ぎ去りますと・・
J-SOXは、どこの上場企業でも、単なるハンコ押し確認作業やコピー取り作業になってしまい、何のためにやっているのか理解している方がいるか、怪しい状態になっているとも聞きます。
IFRSも自見談話で全上場企業への強制適用が事実上無くなってしまうと、任意適用を考えている大手はともかく、たいていの中小上場企業では、IFRS?何それ?というわけで、組織に蓄積されたはずの知見が消え去ってしまいました。
さて、コーポレート・ガバナンスの件で、本日読みましたのはこちら。
- 作者: 藤田勉
- 出版社/メーカー: 東洋経済新報社
- 発売日: 2015/05/29
- メディア: Kindle版
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年功序列・終身雇用、系列・下請け構造、官僚主導、メインバンク制、企業別労働組合、株式持合などを特徴とするいわゆる日本的経営というのは、持合株式を除き、1940年代に総力戦に対応するために作られた戦時体制であることから、日本のガバナンスはこの戦時体制(1940年体制)に対応するためにつくられたものであることから本書は始まります。
日本的経営は戦争には間に合わず、むしろ戦後のキャッチアップ・高度成長の時期にうまく機能していたものの、バブル崩壊後は成長を阻害する原因になっていると続きます。
これを前提に、これと比較するために米国や英国、欧州諸国のコーポレート・ガバナンスの形成や現状を歴史的経緯や法制度も踏まえて紹介しております。
そして、昨年公表されたコーポレート・ガバナンスコードの内容を解説し、その中で特に独立取締役の事実上の義務化など、新しい制度についても触れています。
著者の藤田氏(シティ証券副社長)は、独立取締役などの「制度だけ」を入れても、ガバナンスの改善、それによる企業価値の向上にはストレートには繋がらないと説きます。
日本の上場企業の管理スタッフは非常に優秀ですので、「コード」で求められた制度にはきっちり対応し、きっちり報告書をつくってくるでしょう。
しかし、それをやり過ごし、その形式だけを受け入れて、意味を考えなければJ-SOXなどと同じく、一過性のブームに終わっちゃうんじゃないか。
結果、事務仕事だけ増えて、何も企業価値の向上は望めないんじゃないか。
そんな危惧も抱いております。
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