銀行の貸出金利の構成要素について。
文章で書いているだけだと分かりにくいので、エクセルで表してみました。
銀行ローンの金利の構成要素についても、説明の仕方がいろいろありますが・・
銀行の金利=「貨幣の時間的価値+信用コスト+預金利息+銀行の経費(人件費、物件費、租税公課等)+銀行株主の要求する資本コスト」で構成されているとします。
①まず、信用コストを貸出金利に折り込んで借り手に要求する場合です。
銀行の費用 | 銀行の収益 |
貨幣の時間的価値 | 貸出金金利 |
信用コスト | |
預金利息 | |
銀行の経費 | |
・人件費 | |
・物件費 | |
・租税公課 | |
株主の要求資本コスト |
②次に、借り手が別途、保証会社へ保証料を支払う場合です。
銀行の費用 | 銀行の収益 |
貨幣の時間的価値 | 貸出金金利 |
預金利息 | |
銀行の経費 | |
・人件費 | |
・物件費 | |
・租税公課 | |
株主の要求資本コスト |
借り手の費用負担 | 保証会社の収入 |
信用コスト | 保証料 |
他の条件が同一である限り、①の場合(金利)も②の場合(金利+保証料)も、借り手が負担する費用総額は変わりません。
続きます。
これには、ここまでは書いてありませんw
質の良い資本市場を支えているのは。
資本市場とは、企業が事業に必要な資金を調達するために、株式や社債などの証券を発行できる市場、またはその証券を売買するための市場です。
具体的には、東京証券取引所などの株式市場のことですね。
資本市場は、金融商品取引法や東証規則などの法令・自主ルール、企業会計基準などの会計ルール、企業による様式が統一された財務報告、公認会計士による監査制度などに支えられています。
これらのルールは、黙っていても市場に適切に供給されません。
法令、会計基準、財務報告制度、監査制度などは、それにかかる直接の費用を負担しなくとも利用できてしまいますし、利用を妨げることもできません。
公共財としての性質をもっているため、価格をサインとして適切な水準まである経済主体が自主的に供給するということは起こり得ないわけです。
なので、これらのルールは税金や資本市場参加の会費等で支えられています。
公のお金を使っているわけですね。
また、資本市場を利用して資金を調達しようとする者は、定められた法令、ルール、会計基準をまもり、監査を受けなければならないことになっています。
それを守るつもりのない者は、資本市場から退場させられます。
資本市場の利用は、強制されているわけではありません。
事業を行うために必要な資金は、自分で用意してもいいし、仲間内だけで集めてもいいわけです。
法令や会計基準が自分の意に合わないというなら、自分と仲間だけでやるという自由がありますね。
しかし、それで集められる資金は大きなものにはなりません。
新しい事業を起こして、社会に価値を提供するためにはやはり大きな資金が必要になりますから。
社会に大きな価値をもたらすであろう事業に必要な資金を集められるように。
さらに、株価という価格サインを参考にして、より効率的に資金を活用できる企業へ資金が配分されるように。
株式や社債を発行、流通させる資本市場というものが、公的なお金を使って整備されているわけです。
その資本市場を支えているのは、公務員や公認会計士だけではありません。
企業の中にいて、財務報告という形で資本市場に情報を提供している者。
価格サインを見て、有価証券を売買している一人ひとりの投資家。
資本市場のルールを守らない者は、それら資本市場の参加者すべてを愚弄しているといえます。
kabumatome.doorblog.jp
私も、一人の資本市場参加者として、支え手を愚弄しようとしている人々を、よく見ておこうと思います。
本日の参考文献はこちら。
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お金に関する仕事能力の汎用性のようなものについて。
銀行員受難の時代のようです。
www.yomiuri.co.jp
いえ、1997年金融危機の前後から銀行倒産は現実のものとなっており、銀行員が安定した職業だというのは昔日の話なのですが。
ここ10年ばかり、大きな金融危機が起きていないので、また忘れられているのかもしれません。
さて、銀行員は預金を集める、企業や個人へお金を貸し出す、投資信託や保険などの金融商品を販売するなど、「お金に関する仕事」をしています。
なので、世間の一部では銀行員は次のような能力があるものと期待されているとも聞きます。
①企業の資金調達や資金繰り、財務分析ができる。
②決算書を作ったり、税務処理の実務ができる。
③経費処理の伝票なんか、ちょろいもの。
・・企業融資の実務ができる銀行員なら、企業の「お金に関する仕事」なら何でもできる、そう思われていた時期もあったようです。
ところが、元銀行員が経理部長や財務部長として迎えてみたところ・・上記の①②③なんてまったくできない!というケースが多発したとか。
毎月の所得税源泉徴収もできない、税金の種類も勘定処理の科目もわからない、そもそも伝票が切れない。
まして、決算を組むことなんてできない。
元銀行員には「お金に関する仕事能力」の汎用性など、まったくないというのが本当のところのようです。
これは、銀行員が「無能だ」ということではないようにも思います。
銀行は小さめの地域金融機関でも、世間の標準からすると大きな企業組織であり、その組織の中で仕事は分業されています。
地場で「お金に関する能力」を求めたい中小企業が期待するような、なんでもこなせる、汎用的な仕事はやったこともないし、そういうのは銀行からは求められてもいないからです。
なので、個々の銀行員を「無能」呼ばわりするのは、ちょっと気の毒なのかもしれません。
とは言うものの、転職するなら、なにか自分の能力のようなものをアピールしなければなりません。
やはり、銀行員は「お金に関する能力」でしょう。
冒頭の記事にあるように転職登録をする銀行員、何をアピールできるのでしょうか。
私自身も、考えてみたいと思います。
正直さは、ある日から急に始められるのか。
ある日突然、組織のルールが変わります。
今までは期末になれば押し込み販売などのその場しのぎの対策や、挙句の果てに伝票操作循環取引までやってで売上を立てていたのに。
ある日、不正が明るみに出て経営TOPは追放。
でも、大部分の中間管理職は今まで通り。
言うことだけが変わります。
「これからは、嘘はいけない。」
こんな組織で、その日から変われるでしょうか。
今までは、上手い嘘をつく者、見栄えの良い「取引」を作り上げる者が評価されてきたのに。
率先して嘘と誤魔化しを先導してきた中間管理職は依然としてその位置に座っている。
変わったなんて、信じられるでしょうか。
人間、そんなに簡単に行動規範を変えられるものではありません。
何年経ったら、嘘と隠蔽が褒めらした組織で、正直さが美徳として承認されるようになるのか。
案外簡単に切り替えられる場合と、10年経っても前の行動様式が染みついていて、何も変わっていない場合と。
あなたの場合は、あなたの組織の場合は、どうでしょうか。
「自分がいなくても回る仕組み」の前提条件のお話。
管理職あるいはその業務の中核を担うベテランの大事な仕事は、「自分がいなくても仕事がきちんと回っていく仕組み作りだ」というのはよく聞く話です。
ある分野の仕事が、ある特定の人しかできない・属人的な経験と勘で処理されていてブラックボックス化しているというを避けるためですね。
属人化・ブラックボックス化は不正の温床ですし、たとえ、その特定の人が「善意の人」であったとしても急な病気休暇、あるいは定年退職でいなくなってしまったときに業務の継続すら危ぶまれることになりますから。
なので、情報の共有化・マニュアル化などをコツコツ積み重ねて、「自分がいなくても回る仕組み」を作っているつもり・・だったのですが。
後任者が前と同じような意識で「仕組みの更新」をしていかないと、だんだん法令改正や業務の変化でズレができ、細かい保守管理を継続しないとどんどん合わなくなってしまいます。
「自分がいなくても回る仕組み」というのは、後任が同じくらいの意識をもってその仕組みを「修繕」し続けない限り、あっという間に崩れてしまうものじゃないか、と。
仕組みづくり、だけでは半分で、人づくりもしなきゃいけなかったのかな、とも感じつつ。
「仕組みづくり・人づくりという仕事」そのものが、属人化・ブラックボックス化しているのが原因なのだろうかということに思い当たり、道の遠さに嘆息しております。
現場を動かす影響システムとしての管理会計について。
本日のお題はこちら。
- 作者: 伊丹敬之,青木康晴
- 出版社/メーカー: 日本経済新聞出版社
- 発売日: 2018/01/31
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会計という世界には大きく2つの種類があるといいます。財務会計と管理会計ですね。
財務会計は、企業外部に向けたその企業の財政状態・経営成績の報告するための会計で、
管理会計は、企業の内部の管理者に向け、事業(各部署)の状況等を報告するための会計。
などというふうに説明されます。
いずれも、会計の目的は、企業の外部の者・企業の内部の者が、その会計の仕組みによって情報を得て、意思決定に役立てることともされますね。
さて、本書は管理会計についての本です。
管理会計のテキストといいますと、様々に考案されてきた財務指標の計算方法の説明が数式も交えて詳細に説明されており、意思決定者に適切に情報を伝えてくれる・・というものが多いのではないでしょうか。
そこには、数字で測定される企業内部の人々の顔が見えません。
すべての管理会計システムは上司のための情報システムとともに、影響システムとしての機能を持つ。人は、数字で測定されて評価されると行動を変化させる。きちんと設計されていない管理会計システムは、意図せざる方向に人の行動を変化させてしまう
そう、人間は測定されると、測定結果が自分の人事考課や組織評価に使われずとも、行動を変化させるのです。
標準的な管理会計テキストでは、ある指標を設定すれば、設定者の意図通りに被測定者が動くことが前提となっているのでしょう、そういう側面にはあまり焦点が当たっておりません。
本書では、原価計算、資産管理、予算管理、投資採算管理、研究開発など様々な場面において、影響システムによって人々の行動がどう変化するのか、どのように管理会計システムを設計すべきなのかということが詳細に述べられております。
こう設計すれば絶対OKという解は書かれておりません。
それは各企業のおかれた環境も事業内容もすべて異なるからですね。
現場への理解と試行錯誤で、企業経営を強くすることができる、とされております。
標準的な管理会計テキストの「現実味のなさ」へ違和感を抱いている方も、ぜひお読みください。