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銀行の財務報告を読む。(その8)

七十七銀行の公的資金導入のリリースが出ていますね。

(PDF注意)金融機能強化法に基づく国の資本参加の決定および経営強化計画の策定について

この度の公的資金は一般に用いられた優先株ではなく、劣後ローンを利用するようです。
金額は200億円。
七十七銀行の預金量は約6兆円、貸出金は3兆5千億円、純資産は2,800億円あまりですから、自己資本比率(国内基準)は11%超。貸出余力は十分です。
この200億円という公的資金は何の意味があるの?という疑問を持たれるかもしれません。
200億円の公的資金で、銀行に生まれる貸出余力(リスクを取る能力)は200億円では無く、それを4%で割り戻した5,000億円から始まることになります。

七十七銀行は国内でしか活動していないため、金融庁告示18号(バーゼルⅡ規制)では「国内基準行」です。
国内基準行の維持すべき自己資本比率は4%ですね。
200億円の公的資金を借入しますと、これを4%で割り戻した分=5,000億円の貸出余力が生じることになります。*1
これはリスクウェイト、つまり分母の計算が100%である場合の仮定でして、中小企業向けであればリスクウェイトは75%、担保付住宅ローンであれば35%になりますので、実際の貸出余力は5,000億円どころかもっと多くなります。
また、この公的資金により、貸倒損失が従来よりも多くなった場合でもバッファーの役割を果たすことになるため、よりリスクを取った貸出が可能になるという効果もあります。*2

しかし、筆者が思うに、この公的資金の狙いは地域に対するアナウンスではないかと。
七十七銀行は財務内容も盤石で、公的資金導入の必要はまったくないと考えられます。
それにも関わらず、震災後すぐに公的資金導入に手をあげたのは、全力で被災した地域企業を支えます、という宣言的なものではなかったかと。
上にあげたような技術的な数字はともかく、その狙いが当局・銀行とも一致したのではないかと感じている次第であります。

有難いご指導に従った、というのではなく、自ら手を上げた七十七銀行経営陣の判断には敬意を表したいと思います。

*1:今般の公的資金は劣後ローンですが、バーゼルⅡの規制上ではこれはTierⅡの自己資本の扱いになります。

*2:銀行のリスク管理上、貸倒損失へ配賦する資本が厚くできるという効果ですね。

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