すらすら日記。

すらすら☆

アマゾンの倉庫で働くこと。ジャンクフードで生存を満たすこと。

本日のお題はこちら。

アマゾンの倉庫で絶望し、ウーバーの車で発狂した?潜入・最低賃金労働の現場?

アマゾンの倉庫で絶望し、ウーバーの車で発狂した?潜入・最低賃金労働の現場?

誰かがクリックすると、彼は歩かなければならない。
アマゾンの倉庫。
歩数を計測される機械を腕に装着されて一日中クリックされた荷物をピッキングする絶望的に単調な仕事。
1日平均16キロを歩かされる。昼食は30分だけ。
いつもマネージャーに監視され、ちょっとしたミスを詰られ罵倒されて、尊厳を傷付けられる
定められたペースに追い付かないとペナルティポイント。
ある点数を超えると解雇さえれてしまう。

仕事が終わると、足はむくんで膨れ上がり疲労困憊。
欲しくなるものは、塩分と油分たっぷりのジャンクフードとアルコールだけ。
ブロッコリーを茹でる気力もない。
ストレスでジャンクフード、アルコール、タバコが増える。

炭鉱が廃坑となり、さびれた英国の田舎町にできたアマゾンの倉庫。
900人の雇用を生み、地域が再生できると期待されたのに。
得られたのは時給7ポンド(1000円弱)の人間の尊厳を奪うような単純労働。

イギリス人は耐えられずに辞め、そこを埋めたのはルーマニア人など東欧からの出稼ぎ労働者。
彼らはジャンクフードで生存を満たすのが精いっぱいで、言葉をもたない。
英国人のジャーナリストが実際に働いてみたのが、この世界でした。
低賃金労働者は愚かだからジャンクフードを食ってブクブク肥満し、アルコールとタバコに耽溺すると思っていたのに。
人間としての尊厳を奪われて過酷な労働に痛めつけられれば、ジャンクフードくらいしか逃げ道はありません。

人は、こんなにも弱いのです。

これは2016年に書かれた本です。
アマゾンの倉庫ではピッキングの自動化も進みつつあるとの報道もあります。
最後には倉庫は無人になってしまうのでしょう。

その日、時給7ポンドとジャンクフードで生存を確保していた人々は、どこへ行くことになるのでしょうか。


不動産投資に失敗しても、やり直せる手段を選べる社会に。

本日のお題はこちら。

日本経済自体の地盤沈下によって年収UP自体が望めないこと、
年金など社会保障制度に対する不信・不安、
超金融緩和環境による銀行の貸出競争など。

ローンを借りて不動産投資を行う方が増えていたようです。

しかし、最初から採算が見込めない自転車操業状態だったかぼちゃシェアハウスの問題が明らかになり、合わせてスルガ銀行などの不正融資が発覚して多くの不動産投資家が家賃収入ではローンを返せなくなる事態に追い込まれている、と報道されております。

本書は、悪質な不動産業者や金融機関のモラルのなさを厳しく批判し、その実態に警鐘を鳴らしております。
悪いのは不動産業者やそれに協力して不正融資までやる銀行であり、投資家は善意で騙されているだけだ、というスタンスのように書かれていたように思います。

確かに、百戦錬磨の不動産業者や、借り手を食い物としか見ていない銀行にとって騙されてしまう投資家は、被害者であるという一面もあるのでしょう。

しかし、被害者は自分たちは騙されただけなので、破産などの法的手続きはしたくないという言い分をしているのには違和感を覚えました。

破産という手続きは、支払い不能になった場合にある財産を債権者に公平に分配してそれで「終わり」にするだけであり、破産者を道徳的に非難するものでもなんでもないはずなのですが。

破産という「恥ずべき事態」には陥りたくない。

破産は「穢れ」であるかのようにとらえているのでしょうか。

法的手続き自体は価値中立です。

失敗してしまったら、誰もが利用して再出発できる公平な制度です。

現代の日本は、古代のように債務を返済できなくなったら奴隷として一生を拘束されてしまうような社会ではありません。

やり直す手段はあらかじめ用意されているのですから、弁護士に依頼して、また再出発すればいいのではないでしょうか*1


*1:かぼちゃ問題に巻き込まれてしまった給与所得者には士業など破産すると資格を失う方や、自宅を手放したくないという事情もあると報道されています。この場合、自宅を維持したまま一定額を弁済することで免責される民事再生の手続もあると聞きます。かたくなにならず法律専門家である弁護士に相談することから始めてみてはどうでしょうか。債務者を救済すると称してお金を巻き上げるいう二次被害も起きつつあるという噂もありますので、早く信頼できる弁護士のところへ行くのが良い選択肢であると思います。

優先株出資と銀行融資の間に。

本日のお題はこちら。

投資ファンドといいますと、一般には次のようなイメージでとらえられているのではないでしょうか。

まず、社会の在り方を劇的に変えるような革新的なアイデアを持ちながら、資金が不足している起業家を見つけだし、そのアイデアを事業化するために必要なお金を株式の形で投資。

首尾よく、そのアイデアが事業化されて株式を上場させることで、起業家とともに莫大な上場益を得る・・というものでしょう。

本書で紹介されている「地方創生ファンド」は、そういう「派手なもの」ではありません。

地場で、ちょっとした課題を解決できるようなアイデアを持ちながら、事業実績や担保がないために既存の銀行から融資を受けられない起業家をみつけて、優先株で出資。
事業が軌道に乗れば、その優先株を(プレミアムを乗せて)起業家に買戻してもらうことで投資利益を得る、という割と、地味なものです。

ところで、本書の著者が代表を務める様な投資ファンドは、起業家の必要を満たすような資金を手許には持っていないのが通常です。

ここで、ファンドへ資金を出してくれるのが、預金をバックにした資金を豊富に持つ地域金融機関です。

ここで、疑問がでるでしょう。

融資の審査基準に満たないからお金を出せないはずなのに、なぜ、優先株出資ならできるのか、という。

銀行は企業へ融資を行った場合、一定の利息を支払ってもらい、なおかつ元金も回収していかなければなりません。
これに対し、優先株出資ならば、利息を払う必要はありませんし、元金を返す必要もありません。
起業家が持つアイデアは、確実に事業化できるとは限りません。

銀行融資というものは、最初に決めたとおりに元利金を支払いしなければならないので、不確実な事業のアイデアの実現に必要な資金の調達手段としては、不向きなのです。

本書、金融の専門家でもない読者でも理解できるようにいろいろ理屈を単純化してわかりやすく書いており、このあたりの説明も曖昧です。

一般向け書籍としては、じゅうぶんでしょうが、ちょっと追加してお話いたしました。

さらに詳しく、銀行側がなぜこういう地方創生ファンドへ出資するのか、という点に関しては、また別稿を書こうと思います。



スルガ銀行・シェアハウス向け融資の処理状況について。

スルガ銀行の2019年3月期決算短信が開示されましたので、シェアハウス向け融資がどの程度まで焦げ付いているのか、その処理状況はどうなっているのか、読み込んでみました。

画像はいずれもスルガ銀行決算短信からの引用です。
www.surugabank.co.jp

まずはこちらをご覧ください。
f:id:sura_taro:20190519182112j:plain
シェアハウス向け融資の残高は約2,000億円。その延滞率は約40%です。他の個人ローンの延滞率は住宅ローンで0.3%弱、カードローンで3%ほどですので、シェアハウス向け融資のローンの延滞率が突出して高いことがわかります。

これを金融再生法ベースで分類したのが次の表になります。
f:id:sura_taro:20190519182709j:plain
こちらの表は、シェアハウス向け融資約2,000億円に加え、シェアハウスオーナー(銀行から融資を受けている者)が、合わせてスルガ銀行から借り入れしている別のローンまで加えた額2,500億円の内訳になります。
シェアハウス融資を借入するときに1,000万円程度のフリーローンも「抱き合わせ販売」されたとの報道もありますので、これらなどが合算されていると推測されます。

内訳を説明します。
破産更生債権は、もう破産・民事再生など法的手続に着手してしまった債権で、いちばん状態が悪い不良債権になります。865億円。
危険債権は、法的手続きには至っていないものの、約定弁済が滞ってしまっているなど相当程度の危機的状況に陥っている債権になります。510億円。
要管理債権は、シェアハウスオーナー(借り手)とスルガ銀行との間で、約定返済額を緩和したり、金利を引き下げしてるなどまだ返済し続けている債権になります。880億円。

ここまでが「不良債権」で、約2,256億円。
9割が不良債権化していることになります。
正常債権、つまり当初の約定通り返済されている債権は246億円で、わずか全体の1割弱しかありません。

着目したいのは、2018年9月期との変化です。
法的手続き等に移行した破産更生債権は、318億円から865億円で500億円以上増えています。
これは、危険債権が1016億円から510億円減少していることから、債権内容が悪化して振り替わったものと考えられます。

さて、最終処理状況です。
f:id:sura_taro:20190519183954j:plain
最終処理である「貸出金償却」は26億円、「債権売却損」が22億円計上されていますが、シェアハウス向け融資は2500億円でほぼ変化しておらず、この最終処分損は別のローンのものであると推測されます。

今のところ、シェアハウス向け融資の最終処理は進捗していないようですね。
ニュースリリースにもありましたが、これから借り手との間でローンの減免交渉が進むのでしょう。

その際、担保の評価替えなどが行われれば追加の貸倒引当金繰入、貸出金償却が行われる(二次ロス)ことも考えられます。
また、減免交渉が不調になれば、競売などの法的手続きに進むことになりますが、一般に任意での回収継続よりも法的手続きに移行すると物件が買い叩かれる傾向であり、ここでも二次ロスが発生するものと考えられます。

シェアハウス向け融資の最終処理は、まだまだこれからです。

引き続き、注目したいと思います。

note.mu



詳細版をnoteで公開しました。

普通の人びとによる「普通ではない行為」による不安について。

本日のお題はこちら。

増補 普通の人びと: ホロコーストと第101警察予備大隊 (ちくま学芸文庫 (フ-42-1))

増補 普通の人びと: ホロコーストと第101警察予備大隊 (ちくま学芸文庫 (フ-42-1))

ナチスによるユダヤ人大量虐殺について、その原因を探るために多くの研究がなされてきました。
ナチズムを「狂気だ」とだけ断罪しヒトラーやナチ親衛隊幹部の個人的に残虐性を好む資質だけに帰結させる。
あるいは、ナチズムはドイツ史の自由を重視せず抑圧的な同調を強いる社会のなかからこそ生まれてきたものである。

最初はそのような「説明」がなされてきました。

それとは異なる、自分たち普通の人間があのような虐殺行為を繰り返すことはない。
そう安心していたこともあったようです。

本書の研究対象である第101警察予備大隊は、前線で兵士として戦うには年を取りすぎている中年の召集警官たちで構成されていました。警官たちは主にハンブルグで召集された中下層の労働者出身であり、ナチズムの人種イデオロギーを注入された熱狂的なナチ親衛隊員ではありません。

しかし、この普通の人びとで構成された警察大隊は、数万人のユダヤ人を直接に射殺し、あるいはトレブリンカ絶滅収容所へ送り込むことに。
大隊長の少佐が、射殺行為に耐えられない者は参加しなくともよいと命令には添えたにもかかわらず、警官たちの8割以上は虐殺行為に参加します。

命令には従わなければならない。
同僚の警官の前で無様な姿を見せるわけにはいかない。
男らしくないと思われたなくない。
自分が射殺命令を拒否すれば、誰かが代わって射殺をしなければならない。
「良い仕事」を認められて警官として出世したい。

動機の多くはこんなものでした。

ごくまれに、ナチ親衛隊も顔負けな残虐性を発揮し、殺人行為そのものを「楽しむ」ような人物もいましたが、それは例外。
多くの普通の警官たちは「仕事」として嫌々ながら、だんだん慣れていって虐殺行為を繰り返しました。

命令違反に対する処罰に対するおそれもあったことでしょう。
しかしながら、射殺拒否した警官たちは別に処罰も受けていないのです。

普通の人々から構成された警官隊が、こんなにも簡単に大量虐殺を行ってしまう。
拒否したのは、わずか1割~2割弱程度。
ナチは狂信的な異常者だ、あるいはドイツ史固有の要因によりこのような虐殺が起きたという「安心できる」説明とは異なり、この警察大隊の行為に我々は不安を感じてしまいます。

今日、世界中で戦争と虐殺行為は続いており、自分とはちょっと異なるカテゴリーだと決めつけた集団へ、普通の人々の怒りをかきたてる様な扇動行為もあちこちで見かけます。

そういう人間の性質と、その行為に向き合わねばならないと感じさせられました。


楽しく読める会計の役割の歴史的変遷について。

本日のお題はこちら。

今日まで続く複式簿記を使った会計の歴史は、イタリア都市国家における「取引の記録」から始まるとされています。

本書も、イタリア都市国家の銀行(バンコ)での取引記録から始まります。
オランダ東インド会社ができて複数年にわたって継続する企業(出資者有限責任の株式会社)が登場、いくら出資者に分配できるのか、を計算するために決算と財務報告の仕組みが作られたことに続きます。

ここまでは会計の役割は「忘れないように記録する」というレベルでした。
会計の利用者は、おもに事業を経営する人のためのものといえるでしょう。

続いての章では、蒸気機関の発明と鉄道会社の登場により、多額の固定資産(線路や汽車)を備えた株式会社が成立、固定資産の取得価額を複数年にわたって費用とする減価償却の考え方ができるなど、財務会計の仕組みが複雑化していく様子も。

この頃になると、会計は株式投資のために外部に会社の状況を報告するための役割も果たすようになります。

続いて、デュポン公式に代表されるような管理会計の仕組みができていったことも紹介されます。
過去を記録することだった会計の役割が、コーポレート・ファイナンスの理論の登場により未来を予測するためにも利用されていく様子も述べられております。

会計の本というと、会計理論ばかり並べられて人間の顔が見えない無味乾燥なものになってしまいがちですが、本書では、それぞれの歴史のなかで、その当時の起業家、画家や音楽家の行動が会計の理論からみてどう説明されるのかなども合わせて紹介されおり、楽しく興味をもって読み通せるように工夫されております。

簿記の「借方・貸方」などの会計の専門用語は、入門者にとって理解が困難で「死の谷」とも呼ばれているそうです。
本書では豊富な図解とイラストも載っており、その谷を越えていけるのではないかと。

一度は会計の勉強に挫折した方でも、ぜひ。


ソビエト赤軍による東欧諸国の「解放」の実態について。

本日のお題はこちら。

鉄のカーテン(上):東欧の壊滅1944-56

鉄のカーテン(上):東欧の壊滅1944-56

第二次世界大戦下、東欧諸国では、ハンガリーのように権威主義的なホルティ提督の政権がドイツと同盟を組んでソ連と戦っていたり、ポーランドのように国そのものが消滅してしまったものの、ロンドンに亡命政府を作って国内軍と呼ばれるレジスタンス活動を行ったりしていました。

1945年、敗走するドイツ軍を追ってソビエト赤軍は進撃し、次々と東ヨーロッパ諸国を「解放」しようとします。

ハンガリーのホルティ提督は、ソビエト赤軍が接近するとドイツとの同盟離脱を模索しますが、察知されてファシスト政党である矢十字党にとって代わられてしまいます。

ポーランド国内軍はソビエト軍ワルシャワ接近をみて、独力で祖国を解放するために蜂起します。
米英軍の細々とした空輸は得られたもののソビエト赤軍は停止・傍観し、ポーランド国内軍は敗れ、ワルシャワはドイツ軍によって完全に破壊されてしまいました。

このような経緯を経て、ソビエト軍は東欧諸国の「解放」を達成してしまいます。
その「解放」に際しては、賠償名目で工場設備の根こそぎロシアへ運び去られ、市民の腕時計は巻き上げられるという公的・私的な略奪とともに、女性に対する組織的な性的暴行が行われ、市民はソビエト赤軍への深い恨みを抱いてしまいます。

現地のファシスト党権威主義的政府は追放され、かわってやってきたのはモスクワで訓練された共産主義者たちでした。
1945~1946年頃は、東欧諸国でも複数政党制が認められていました。
モスクワ帰りの亡命共産主義者たちは、警察やラジオ、出版に必要な紙の割り当てなどを掌握して選挙宣伝では圧倒的に有利な立場を手に入れます。
選挙を行えば、労働者たちはその階級的立場から、祖国解放と土地改革にも感謝して共産党に投票してくれるはずだ(マルクス・レーニン主義イデオロギーからすればそのとおりなのですが)、素朴にも信じておりましたが・・戦前からのロシア、ボリシェビキへの警戒、略奪暴行の記憶から、共産党はせいぜい10~15%程度しか得票できずに終わってしまいます。

これをみて、ソビエト赤軍という強大な武力を背景に、徐々に東欧諸国はソ連の政治システムを移植されていきます。
複数政党制は完全に形式だけになり、秘密警察による密告網がつくられ、教会や青年団体への介入と弾圧、モスクワ帰り共産主義指導者を「ミニ・スターリン」として崇拝すること、「裏切り者」への見世物裁判*1・・こうして、1950年頃までに東欧諸国は鉄のカーテンの向こうにある閉ざされた独裁国家になってしまうことになります。

本書は、東ドイツハンガリーポーランドについて、その「解放」がどのようになされてきたのか、ソビエト化、共産化がどのようになされていったのかを未公開資料の調査や当事者への豊富な取材も踏まえて詳細に記述しています。

1953年、独裁者スターリンは死去。
続くフルシチョフの秘密報告(スターリン批判)により、東欧諸国では反ソ暴動が発生します。
「行き過ぎ」と「個人崇拝」を咎められた各国のミニ・スターリンは失脚し追放されたりはしますが、暴動はソビエト赤軍により無惨に鎮圧されてしまいます。

その後、東欧諸国は「嘘のイデオロギーを嘘とわかりつつ信じているフリをする」、窒息した国として生きていくことになるのですが。

秘密警察と監視、密告、嘘のプロパガンダによるソビエトモデルは、その後アジア・アフリカ諸国にも「移植」されていきます。

ロシアではスターリンの再評価と都合の悪い歴史文書館の非公開化なども進み、中国ではサイバー監視国家として新しい独裁と監視が進む今日。またこの東欧諸国「解放」の歴史を振り返ってみるのも興味深いと思われます。


*1:東ドイツでは見世物裁判は行われませんでした。ドイツ人である西ドイツ世論を意識していたためとも言われます

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