リスク量は比較可能?
さて、有価証券報告書・金融商品関係「市場リスク定量情報」の注記の読み方の第二弾です。
財務報告が「株式を購入・保持・売却すべきか」という意思決定に有用性を持つためには、他社との比較、また自社の過去の業績との比較可能性がなければならない、というのが教科書の教えるところです。
メガバンクは大き過ぎて数字に実感がわきませんし、証券子会社や消費者金融会社も傘下に持つので単純な比較も難しいです。
ここで、大手地銀二行を比較してみます。
横浜銀行 有価証券報告書より 23年3月期
http://www.boy.co.jp/boy/shareholder/zaimu/yuka.html
連結自己資本比率(国際統一基準)12.28%
基本的項目7,158億円
市場リスク量 1,102億円
測定方法 ヒストリカル・シミュレーション法
七十七銀行 有価証券報告書 23年3月期
http://www.77bank.co.jp/77bank/ir/yukasyoken.html
連結自己資本比率(国内基準)11.69%
基本的項目2,854億円
市場リスク量 996億円
測定方法 分散共分散法
横浜銀行は七十七銀行より自己資本*1が2倍以上あるにもかかわらず、市場リスク量はどちらも1,000億円とほぼ同額です。
これはバリューアットリスク(VaR)、「起こりうる最大の損失額」あるいは「100回に1回程度の確率で起こりうる損失」*2を示しています。
これは七十七銀行がリスクテイクし過ぎ・あるいは横浜銀行が慎重な運用を行っている・・とも感じられるかもしれません。
しかし、測定方法は横浜銀行がヒストリカル・シミュレーション法であるのに対し、七十七銀行は分散共分散法で異なっていますし、有価証券報告書に開示された情報だけではリスク量測定にあたってはどのような前提を置いているのかはあっさりしか書かれていないため、これがリスク取り過ぎなのか、慎重過ぎる運用なのか判断することは困難です。。
また、市場リスク量のうち、どのくらいが金利リスクで、どの程度が株価変動リスクなのか内訳も記載されておりせん。
こんな開示で比較可能性が担保できるのでしょうか?
次回へ続きます。
参考文献
- 作者: 東京リスクマネジャー懇談会
- 出版社/メーカー: 金融財政事情研究会
- 発売日: 2011/05
- メディア: 単行本
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