「ご説明」という儀式の無意味さについてのお話。
建て前として、経営者はその経営判断の前提となる現在の事実や将来の見通し、取り巻く環境や規制や法制度、その帰結までしっかりと理解したうえで最後の決断を行うことになっています。
しかし、経営者が現場で実務をやっていた時代に比べれば、様々な事象は複雑に絡み合っており、理解することはなかなか困難です。
特に、金融業界では、バーゼル規制、制度会計、税制、上場規則など守らなければならない規制は複雑怪奇なレベルになっており、直接、担当したことがなければ、何を意味しているのかさっぱり、というのが実情ではないかと。
しかし、社外の方も交えた重要な会議では、最初に述べたように経営者はそれらを理解している、という建て前から始まります。
そうなると、担当者から経営者に向けて事前の「ご説明」がなされることになります。
そのご説明資料を作成するために、膨大な時間が費やされます。
経営者はそれを頭に詰め込んで、とりあえず社外の人の前で暗記したことを説明して、面目を保つ。
こういう儀式が、日本全国で行われているのではないでしょうか。
いちばん上の経営層だけでは無く、ヘタをすると担当する部長クラスにまで「ご説明」を繰り返す必要があるところもあるとか。
スタッフは、複雑怪奇な実務をこなしつつ、さらにご説明用のサマリー作りに疲弊することに。
さて、経営判断する場合、規制の内容を理解している必要があるはずでしたが。
その場を凌ぐための「ご説明」詰め込みで、それは可能になるのでしょうか。